近年、さまざまな疾患に関連することが報告されている腸内細菌叢について、また新たな知見が示された(関連記事「コロナ後遺症に腸内細菌叢が関連」「SLE発症に腸内細菌叢が関連?」)。立命館大学スポーツ健康科学部講師の寺田昌史氏らは、大学生アスリートを対象に、腸内細菌叢の構成と外傷リスクとの関連を検討。スポーツ外傷・障害既往歴を有さないアスリートと比べ、足関節捻挫の既往歴を有するアスリートでは腸内細菌叢における種の豊富さ(species richness)が低いことが明らかになったと報告した。詳細はRes Sports Med2022年2月11日オンライン版)に掲載されている。

足関節捻挫は脳の可塑性や高位中枢神経機能に悪影響

 足関節捻挫は日常生活やスポーツ活動中において高頻度に発生する運動器外傷の1つで、姿勢の安定性を保つ能力や筋力、主観的運動機能を低下させ、心身に多様な機能障害をもたらす。

 近年、足関節捻挫が小脳における白質構造の変化をはじめ、脳の可塑性と高位中枢神経機能に悪影響を及ぼす可能性も示唆されている。

 加えて、脳はさまざまな経路を介して腸と双方向的なネットワークを構築していることが知られており、変形性関節症患者において腸内細菌叢の多様性が低下しているとの報告が示されるなど、関節と腸が密接に関与し合っている可能性も考えられる。

 そこで寺田氏らは、大学生アスリートを対象とし、足関節捻挫に伴う脳の可塑性が腸内細菌叢に与える影響を検討した。

足関節捻挫既往あり群で割合が高い菌種も判明

 検討では、試合や競技会のないオフシーズン期に、足関節捻挫既往歴を有する大学生アスリート32例(既往あり群)と有しない大学生アスリート18例(既往なし群)を対象に、対象が自己採取した糞便における腸内細菌叢を分析。腸内細菌叢の多様度指数と腸内細菌群の占有割合を既往あり群と既往なし群で比較した。

 その結果、既往なし群に比べ、既往あり群では腸内細菌叢のspecies richnessを示す指数Chao1が有意に低かった。

 さらに、既往なし群と比較し、既往あり群ではBacteroides FragilisおよびRuminococcus Gnavusの割合が有意に高いことも明らかになった。

 一方、既往あり群と既往なし群で、腸内細菌叢の種の均等度(species evenness)およびサンプル間における腸内細菌叢の多様性(β多様性)には有意差が認められなかった。

 寺田氏らは「足関節捻挫は"無理ができる外傷"として軽視される傾向にある。だが、今回のような研究がさらに進展すれば、生命と健康に重大な脅威となりうる外傷であるという認識が高まり、腸内細菌叢へのアプローチによる心身の機能改善法、足関節捻挫の再発予防法や革新的な治療法が生み出される可能性もある」と述べている。

(陶山慎晃)