医療機関での抗菌薬処方が、その後の介護医療施設における多剤耐性菌の検出に与える影響については不明点も多い。米・University of Michigan Medical SchoolのKyle J. Gontjes氏らは、前向きコホート研究の二次解析により、急性期治療での抗菌薬使用が介護医療施設(ナーシングホーム)における多剤耐性菌検出リスクを高めるとの結果をJAMA Netw Open2022; 5: e2144959)に報告。急性期病院からナーシングホームに移った高齢患者の約7割に抗菌薬が投与されており、その多くは耐性化リスクが高いという実態が浮かび上がった。

急性期から慢性期における投与実態を調査

 Gontjes氏らは今回、ナーシングホーム入所者を対象とした前向き縦断コホート研究(Clin Infect Dis 2018; 67: 837-844)のデータを用いて、急性期病院からナーシングホームへの転院など、高齢者診療の一連の過程における抗菌薬投与の特徴を調査。急性期治療における抗菌薬曝露とナーシングホームでの多剤耐性菌のコロニー形成や室内環境汚染との関連について分析した。

 対象は、2013〜16年に米・ミシガン州内の6つのナーシングホームに新たに入所した高齢者(入所から14日以内)642例(平均年齢74.7歳、女性57.5%、白人62.6%)。登録時、14日目、30日目、以降は6カ月間または退所するまでの毎月、患者自身と室内環境の多剤耐性菌サーベイランスを実施した。

 ナーシングホームの医療記録から、登録時および各追跡訪問時の抗菌薬曝露歴に関する情報(抗菌薬の種類、適応症、投与経路、投与開始施設など)を抽出。Clostridioides difficile感染症(CDI)リスクおよび、2019年に世界保健機関(WHO)が提唱した抗菌薬適正使用基準〔AWaRe分類:Access(一般的な感染症の第一選択薬)/Watch(耐性化が懸念されるため限られた適応にのみ使用すべき抗菌薬)/Reserve(最後の手段として取り扱うべき抗菌薬)〕に基づき、薬剤耐性化リスクを評価した。さらに、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、ナーシングホーム入所前60日以内の抗菌薬曝露とナーシングホームにおける多剤耐性菌検出との関連を検討した。

処方の約5割が多剤耐性化高リスクに分類

 642例中609例(94.9%)が急性期病院経由でナーシングホームに入所し、急性期後ケアを受けていた。ナーシングホームの入所期間の中央値は28.0日だった。

 422例(65.7%)が計1,191回の抗菌薬投与を受けており、病院関連の処方は368例(57.3%)の計971回、ナーシングホーム関連の処方は119例(18.5%)の計198回だった。283例(44.1%)は、CDIリスクの高い抗菌薬を投与され、322例(50.2%)はAWaRe分類で高リスク(WatchまたはReserve)の抗菌薬を投与されていた。いずれの抗菌薬もナーシングホームよりも病院で多く処方されていた。

高リスク抗菌薬曝露で関連が強まる傾向

 登録時、56.7%(364例)に多剤耐性菌コロニー形成が認められ、68.1%(437例)に多剤耐性菌による室内環境汚染が認められた。多変量解析の結果、研究登録前60日以内の抗菌薬曝露は、ナーシングホーム入所時の多剤耐性菌コロニー形成〔オッズ比(OR)1.70、95%CI 1.22〜2.38〕および室内環境汚染(同1.67、1.17〜2.39)の有意なリスク上昇が示された。

 これらの関連は、CDIリスクの高い抗菌薬(多剤耐性菌コロニー形成:OR 1.99、95%CI 1.33〜2.96、室内環境汚染:同1.86、1.2〜2.79)またはAWaRe分類高リスクの抗菌薬(それぞれ同2.32、1.61〜3.36、1.86、1.26〜2.75)への曝露により強まっていた。

 Gontjesらは、ナーシングホームで急性期後ケアを受ける高齢患者に対し、抗菌薬が頻用されている実態が明らかになったとし、「中でもCDIリスクが高い、あるいはAWaRe分類で高リスクと定義される抗菌薬が広く処方されていたという結果は興味深い」と指摘している。また、薬剤耐性化リスクの高い抗菌薬への曝露とナーシングホーム入所時の多剤耐性菌検出との関連は、主にバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)と室内環境汚染によるものだったと付言。

 以上から、同氏らは「ナーシングホームでの多剤耐性菌蔓延を防ぐためにも、急性期病院とナーシングホームが連携して感染対策を強化することの重要性が示された。今後はより長期にわたる研究による検証や、急性期病院における抗菌薬適正使用への介入が、地域の多剤耐性菌蔓延に対し有益であるかどうかの評価が求められる」と結論している。

(編集部)