乳がん治療後などの乳房再建手術や豊胸手術のためゲル充填人工乳房(インプラント)を挿入した患者で、まれなリンパ腫である乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)が発生している問題で、厚生労働省は2月18日、関連学会からアラガン社の人工乳房使用例で新たに2例のBIA-ALCL発症の報告があったと発表。2019年の国内における1例目の報告からBIA-ALCL発症は計4例となった。これを受けて、関連学会は定期診察・自己検診の重要性を再周知するとともに、安全性などに関する最新の情報提供を行った。

発生例はインプラント手術から8年および11年経過

 厚労省は、関連4学会(日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会)から、手術当時未承認だったインプラント植込み患者でリンパ腫が新たに2例発生したことを受けて、情報提供、周知を行うに至った。2例はインプラント手術からの経過期間はそれぞれ8年および11年とされる。両者とも定期検診を受け、自己検診を行っている中で、しこりを自覚しBIA-ALCLの確定診断を受けた。両者とも乳房インプラントおよび被膜・腫瘤を摘出し、1例は血液内科的治療を施行中で、もう1例は治療を予定している段階。

 日本国内では、2013年6月にアラガン社のマクロテクスチャード(表面の性状がザラザラで凹凸が深く表面積が大きい)の乳房インプラントが保険適用となり、乳房再建に使用する例が増加した。だが、BIA-ALCLの発症リスクが高いことが明らかとなり、これに関連した死亡例が発生したことを受け、米食品医薬局(FDA)は2019年7月に同社に自主回収を要請。同社はこれに応じ、日本を含む各国で販売を停止した。

 出荷停止となったアラガン社製品を使用した患者でのBIA-ALCL発症は、2020年8月までに620例(約2,200~3,300人に1人)。国内では2019年に1例目の発症例が報告されて以降、今年2月18日までに3例目と4例目が報告された。

 なお、他社が販売するインプラントを含めると、2021年1月までに全世界で900例以上のBIA-ALCL発症が報告されている。BIA-ALCLは、表面の性状がざらざらした「テクスチャードタイプ」のインプラント使用例で起きやすく、表面の性状がつるつるした「スムーズタイプ」(スムーズシルクを含む)では発症リスクが極めて低いとされている。

リンパ腫発生例の多くは治癒、治療が遅れると死亡例も

 BIA-ALCLは、インプラントを植え込んでから平均7~9年ほどで発症する可能性がある。現れる症状として、インプラント周囲に液体がたまって胸が大きく腫れる、またはインプラント周囲のしこりなどがある。BIA-ALCLを発症しても、多くはインプラントを摘出しその周囲の組織を切除することで治癒するとされるが、治療の開始が遅延したことで化学療法や放射線療法が必要となったり、非常にまれだが死亡例も報告されている。 

 関連4学会は、出荷停止となったアラガン社の乳房インプラントを使用した乳房手術を受けた人に対し、インプラントの破損や合併症の発見のために2年に1度の画像検査を推奨してきたが、BIA-ALCLは早期発見が重要になるとして、引き続き一生涯の自己検診と医療機関での定期検診の継続を行うよう注意喚起を行っている。

(小沼紀子)