英国・University of OxfordのJiandong Zhou氏らは、香港の電子健康記録のデータベースを用いてSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬で治療中の2型糖尿病患者を対象に、両薬が心不全および心筋梗塞に及ぼす影響を検証する住民ベースの後ろ向きコホート研究実施。結果をESC Heart Fail2022年2月7日オンライン版)に発表した。SGLT2阻害薬は、DPP4阻害薬に比べ全てのイベント発生率が有意に低かった。

傾向スコアマッチングで4万例超を解析

 2型糖尿病治療では、SGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬が頻用されている。前者は大規模臨床試験において心血管イベントの低減効果が認められているのに対し、後者で心血管イベントへの明確な効果は示されていない。また、心血管イベント予防効果について、両薬を直接比べた検討は少ない。

 そこでZhou氏らは、香港の電子健康記録データベースを用いてSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬で治療中の2型糖尿病患者を対象に、両薬と心血管イベントや死亡リスクとの関連を検討した。

 対象は、2015年1月1日~20年12月31日にSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を投与された香港の2型糖尿病患者5万9,457例。SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の両方で治療を受けた例、治療中断例、心不全既往例や心不全治療薬投与例、陳旧性心筋梗塞例などは除外した。

 評価項目は、心不全または心筋梗塞の新規発症、心血管死、全死亡で、傾向スコアマッチングにより背景、既往歴などを調整したSGLT2阻害薬群(2万997例)とDPP-4阻害薬群(2万997例)で比較した。  

 SGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群の主な患者背景は、男性がそれぞれ59.07%、67.26%、平均年齢は57.5歳、64.6歳、50歳未満が22.3%、10.1%、80歳超が2.2%、19.9%だった。

 追跡期間中央値は5.6年(四分位範囲5.32~5.82年)だった。

SGLT2阻害薬で、全死亡が74%減

 心不全または心筋梗塞の新規発症、全死亡の累積イベント発生率はのように推移し、いずれもDPP4-阻害薬群と比べてSGLT2阻害薬群で低かった。

図. イベント累積発生率の推移 

35597_fig01.jpg

ESC Heart Fail2022年2月7日オンライン版)

 多変量Cox回帰モデルによる解析の結果、DPP-4阻害薬群に対するSGLT2阻害薬群の心不全新規発症のハザード比(HR)は0.73(95%CI 0.66~0.81)と有意に低かった(P<0.0001)。同様に心筋梗塞新規発症(HR 0.81、95%CI 0.73~0.90、P<0.001)、心血管死(同0.67、0.53~0.84、P<0.001)、全死亡(同0.26、0.24~0.29、P<0.0001)についても、SGLT2阻害薬群で有意にリスクが低かった。

 Zhou氏は「BMIや喫煙、アルコール依存症といった、心血管イベントの重要な生活習慣の予測因子を把握することができなかった点など、幾つかの研究の限界がある」とした上で、「心不全または心筋梗塞の新規発症、心血管死、全死亡に対し、SGLT2阻害薬は抑制的に働いていた。心血管リスクや代謝性のリスクプロファイルを有する2型糖尿病患者では、SGLT2阻害薬の選択が好ましい」と述べている。

(編集部)