鹿児島大学大学院遺伝子治療・再生医学分野教授の小戝健一郎氏らの研究グループは2月18日、骨軟部腫瘍のがん細胞特異的に増殖し、腫瘍を死滅させるように遺伝子改変した腫瘍溶解性アデノウイルスのSurv.m-CRA-1(サバイビン反応性・多因子増殖制御型アデノウイルス)の第Ⅱ相医師主導治験を開始したと発表した。悪性骨腫瘍に対し承認された腫瘍溶解性ウイルス(OV)療法や遺伝子治療薬は世界的にも例がなく、承認されれば初となる(関連記事「腫瘍溶解性ウイルスの臨床応用と今後の展望」)。

第Ⅰ相試験で9例中6例が奏効示す

 骨軟部腫瘍は骨や筋肉、脂肪組織などの軟部組織に生じる腫瘍の総称で、骨腫瘍と軟部腫瘍に大別される。小児から高齢者までの幅広い年齢層で全身のあらゆる部位に発生する。発症頻度は100万人に4人と希少ながんで、日本国内における患者数は500~800人と推定される。

 多くの悪性骨腫瘍には有効な治療法がなく、遺伝子治療や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など革新的な新薬の開発も遅れており、アンメット・メディカルニーズが高いがんとされてきた。

 小戝氏らは、標準治療に不応の治療抵抗性の骨軟部腫瘍9例を対象に、医師主導治験によるSurv.m-CRA-1の第I相試験を実施。最大用量を投与した例でも問題となる副作用は認められず、高い安全性を示した。さらに、9例中6例で奏効が認められ、長期追跡できた2例(低用量例)では、2年以上にわたり奏効を維持するなど高い有効性が示唆された。

独自に開発した遺伝子組み換えウイルス医薬

 今回、第Ⅰ相試験の結果を踏まえ、世界初の悪性骨腫瘍で承認を目指した多施設共同第Ⅱ相試験を開始する。同大学の他、国立がん研究センター中央病院、久留米大学も参加するという。

 Surv.m-CRA-1は、小戝氏らが独自に開発した遺伝子組み換えウイルス医薬。がん細胞のみを破壊し、正常細胞には作用しないため、副作用が少ないのが特徴。悪性骨腫瘍が発生している部位に直接注射して投与する。

 制限増殖型アデノウイルス(CAR)は、遺伝子を改変しがん細胞のみで増殖する。正常細胞にはほとんど作用せず、アデノウイルスががん細胞中で増殖して細胞を溶解することで効果的に腫瘍を死滅させる。溶解性アデノウイルスとも呼ばれ、Surv.m-CRAは腫瘍溶解性ウイルスといわれる。

(小沼紀子)