先天性代謝異常であるファブリー病に関連した腎疾患(ファブリー腎症)の早期診断や酵素補充療法による治療効果判定のバイオマーカーとして、尿中のマルベリー小体(uMB)が有用であることを大阪大学大学院腎臓内科学教授の猪阪善隆氏らの研究グループが見いだした。uMBは一般的な尿検査で評価できるため、ファブリー腎症の早期発見が進み、重篤な合併症の予防につながることが期待されるという。

求められる有用かつ簡便な早期診断法

 ファブリー病は、ライソゾームの加水分解酵素の1つであるα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)が欠損または活性が低下することでさまざまな症状が引き起こされる先天性代謝異常症。α-Gal Aが不足すると、糖脂質であるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)が分解されずに全身の細胞や組織、臓器に蓄積する。それに伴い、小児期は手足の疼痛や発汗低下などが認められ、青年期以降には腎臓や心臓、脳血管など全身に多様な症状が現れ、主な死亡原因となる。

 中でも、ファブリー腎症は20歳以降と比較的早期に出現し、40歳以降で透析に移行する場合もある。臓器障害の進行を抑えるには、早期診断・早期治療開始が重要と考えられている。

 ファブリー病の診断は、遺伝子変異で欠損したα-Gal Aの活性測定や遺伝子検査により行われる。ただし、全身に多様な症状が生じ特異的な症状に乏しいため見逃されやすく、早期診断に有用かつ簡便な検査法がないことが課題となっている。

マルベリー小体の臨床的意義を検討

 研究グループは、ファブリー病患者に特徴的な尿沈査所見として知られるuMBに着目。ファブリー病の早期発見と酵素補充療法による治療効果判定におけるuMBの臨床的意義を明らかにする目的で、後ろ向き研究を実施した。

 対象は、2011年1月~19年3月に同大学病院でファブリー病と診断された患者51例。まず、尿沈渣を腎構成細胞のマーカーで免疫染色し、uMBが腎構成細胞のどの部位から由来するか起源を調べた。次に、7例の腎生検標本を用いて、uMBの量を、なし、少量、中等量、多量の4段階で評価(半定量法)。腎機能で最も重要とされる糸球体機能の中枢を担う細胞ポドサイトの空胞変性(組織所見でGb3の蓄積を表す)の程度との関連を検討した。さらに、酵素補充療法がuMBに及ぼす影響を調べるため、尿中uMB量と酵素補充療法の治療期間との関連なども検討した。

腎病変と強く関連、重篤な合併症予防につながる可能性も

 解析の結果、uMBはGb3が蓄積したポドサイト由来であることが認められた。また、uMBの排泄量が多いほど糸球体当たりのポドサイトの空胞変性が重度であることが確認された(傾向性のP=0.03)。腎障害のマーカーである蛋白尿との間には、このような関連は認められなかった。以上のことから、研究グループは「uMBは蛋白尿より腎組織病変と強く関連することが示唆された」としている。

 また、蛋白尿が認められた例は31%だったのに対し、uMBは63%だったことから、「uMBは蛋白尿に先行して現れることが示唆され、腎病変の早期発見の重要な指標になりうる」と結論している。

 さらに、酵素補充療法を受けた37例を治療期間の違いで4群に分け、尿中uMB量との関連を調べた。その結果、治療期間が長い例ほど尿中uMB量が有意に少なかった(P=0.018)。少数例(9例)を対象にした検討では、18カ月間の酵素補充療法により蛋白尿に有意な影響を及ぼすことなく尿中uMB量が有意に減少した(P=0.03)。研究グループは「uMBがファブリー腎症に対する酵素補充療法の効果判定マーカーになることを示唆するもの」と指摘している。

 以上を踏まえ、研究グループは「迅速、簡便かつ低コストで実施できる尿検査により、ファブリー腎症を早期に発見できる可能性が期待される。それに伴い、将来的に起こりうる腎不全や心不全脳梗塞など重篤な合併症の予防にもつながるだろう」と付言している。

 結果の詳細は、Nephrol Dial Transplant2021; 37: 53-62)に発表された。

(小谷明美)