就寝中も症状を呈する胃食道逆流症(GERD)患者において、睡眠姿勢が右側臥位の者では食道での酸曝露時間が長いことが報告されている。オランダ・University Medical Centers AmsterdamのJeroen M. Schuitenmaker氏らは、GERD患者にインピーダンス・pHモニタリング検査と睡眠時の体位測定を行った結果、右側臥位および仰臥位の睡眠姿勢に比べ、左側臥位では食道での酸曝露時間が有意に短縮したと、Am J Gastroenterol2022; 117: 346-351)に報告した。

不明だった就寝中のGERD患者の症状

 GERD患者の最大80%が夜間に症状を呈することが報告されており、睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性がある(Am J Gastroenterol 2003; 98: 1487-1493J Gastroenterol 2012; 47: 760-769)。健康なボランティア、乳児、GERD患者を対象とした研究では、左側臥位に比べ右側臥位では食道での酸曝露時間が長いことが報告されている。

 しかし、いずれも対象例数が少なく、日中の覚醒時に行われた他、食後の症状に限定した研究であるなど、就寝中のGERD患者における実態は明らかでなかった。

 Schuitenmaker氏らは今回、逆流症状を有する外来患者の前向きコホート研究を実施。インピーダンス・pHモニタリング検査と睡眠時体位を測定し、睡眠中の体位が夜間の胃食道逆流発生に及ぼす影響を検討した。

 対象は、胃食道逆流症状に対しインピーダンス・pHモニタリング検査の適応があり、睡眠時体位装置(睡眠時体位を10秒間隔で測定)を装着でき仰臥位での食道酸曝露が0.5%以上の成人患者。うち、解析対象は76例〔男性45.6%、平均年齢48.9歳、平均BMI 26.7、プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用64.9%、PPI+ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬15.8%、H2受容体拮抗薬1.8%〕。

食道酸排出時間も左側臥位で有意に短縮

 睡眠姿勢の内訳は、左側臥位が最も多く(中央値30.6%、四分位範囲25~75、15.4~48.2%)、次いで右側臥位(同27.3%、14.4~40.7%)、仰臥位(同26.0%、10.2~48.1%)の順だった。極めて少ないものの、腹臥位(中央値0.4%、四分位範囲0.0~4.2%)、直立(同1.0%、0.4~3.0%)も見られた。

 3パターンの睡眠姿勢別に、酸曝露時間(食道内への酸逆流のpHが4%未満持続した時間を睡眠体位時間で割った値)を評価した。その結果、右側臥位(中央値1.2%、四分位範囲0.0~7.5%)および仰臥位(同0.6%、0.0~8.3%)に比べ、左側臥位(同0.0%、0.0~3.0%)では酸曝露時間が有意に短かった(全てP=0.022)。特に食道裂孔ヘルニア(2cm以上)、下部食道括約筋の平均積分弛緩圧が4秒以上、逆流性食道炎を有する患者で酸曝露時間の短縮が顕著だった。

 食道酸排出時間(1症状当たりpH 4%未満の持続時間)は、仰臥位(中央値76秒、四分位範囲22~257秒)および右側臥位(同90秒、26~250秒)に比べ、左側臥位(同35秒、16~115秒)で有意に短かった(順にP=0.030、P=0.002)。

 さらに、睡眠姿勢別に体位変換前後の20秒間(逆流開始前後各10秒)に生じた酸逆流症状の総数を評価したところ、仰臥位が102回、右側臥位が109回、左側臥位が80回で、睡眠姿勢による有意差はなかった(P=0.152)。

左側臥位での睡眠を促す根拠に

 以上の結果を踏まえ、Schuitenmaker氏らは「前向き研究により、右側臥位や仰臥位での睡眠時間を完全に回避または減らすことで、酸曝露時間を大幅に減少させて食道の損傷や夜間の逆流症状が減少する可能性が示唆された。GERD患者に対し左側臥位での睡眠を促す根拠となりうる」と述べている。

 ただし研究の限界として、全例が紹介患者であるため、他の医療機関で既に生活習慣指導やPPIなどによる薬物療法が施行されていたこと、夜間逆流症状は変動が大きく評価にはワイヤレスpHモニタリングがより適していることを挙げている。

(田上玲子)

変更履歴(2022年2月28日):GERDの表記を修正しました