塩野義製薬の抗ウイルス薬「S―217622」は、承認されれば新型コロナウイルス向けに日本企業が開発した初の薬となる。ワクチンや治療薬では欧米が先行したが、安定供給や安全面から国産を求める声は強く、塩野義は「速やかに国民に提供できるようにしたい」(手代木功社長)と開発を急いでいた。
 塩野義は、研究開発費の8割を新型コロナに投入。短期間で候補物質を発見し臨床試験(治験)を進め、申請に至った。これまでに飲み薬タイプの抗ウイルス薬を実用化したのは、世界でも米製薬大手のメルクとファイザーの2社だけだ。
 新型コロナに対する創薬で、日本は後手に回り続けてきた。ワクチンでは2020年6月、大阪大発ベンチャーのアンジェスがいち早く治験を開始したが、開発は難航。このほか複数の企業が治験を進めているが、実用化はまだゼロだ。
 飲み薬では富士フイルム富山化学(東京)のインフルエンザ治療薬「アビガン」が期待を集めたが、有効性を証明できず承認に至らなかった。抗寄生虫薬「イベルメクチン」も十分な治験データは出ていない。
 一方、中外製薬の関節リウマチ薬「アクテムラ」は今年1月、日本でも新型コロナの重症者向け治療薬として承認された。アクテムラは欧米で広く使われ、世界で貢献している。塩野義も治療薬の海外供給を視野に入れており、国産薬を取り巻く状況は変わりつつある。 (C)時事通信社