新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降では、精神疾患のリスクが上昇することが知られている。しかし、これまでの研究は追跡期間が6カ月未満と短く、アウトカムの選択幅も狭いなど、包括的な検討は行われていなかった。米・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らは、米国の国立データベースを用いた大規模コホート研究を実施。COVID-19患者を1年超追跡した結果、不安障害や抑うつ障害など、各種の精神疾患リスクが軒並み上昇したとBMJ2022; 376: e068993)に報告した。

コロナ感染後30日例が対象

 Xie氏らは米国退役軍人省の国立医療データベースから、①新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性後30日が経過した15万3,848例(COVID-19群)、②SARS-CoV-2感染歴のない米国退役軍人医療保険制度(VHA)の利用者563万7,840人(対照群)、③COVID-19によるパンデミック以前のVHA利用者585万9,251人(歴史的対照群)を抽出しコホートを構築した。

 追跡期間中央値は①が377日(四分位範囲347〜470日)、②が378日(同348〜471日)、③が378日(347〜470日)で、事前に設定した精神疾患の発症リスクについて、ハザード比(HR)および1,000人・年当たりの絶対リスク差(RD)を算出した。

ベンゾ使用、オピオイド乱用も上昇

 検討の結果、対照群に対しCOVID-19群では不安障害(HR 1.35、95%CI 1.30〜1.39、RD 11.06、95%CI 9.64〜12.53)、抑うつ障害(同1.39、1.34〜1.43、15.12、13.38〜16.91)、ストレスおよび適応障害(同1.38、1.34〜1.43、13.29、11.71〜14.92)、抗うつ薬使用(同1.55、1.50〜1.60、21.59、19.63〜23.60)、ベンゾジアゼピン系薬使用(同1.65、1.58〜1.72、10.46、9.37〜11.61)のリスク上昇が認められた。

 さらに、米国で過剰使用が社会問題化しているオピオイド鎮痛薬についても、対照群に対しCOVID-19群で処方(HR 1.76、95%CI 1.71〜1.81、RD 35.90、95%CI 33.61〜38.25)、乱用(同1.34、1.21〜1.48、0.96、0.59〜1.37)、代替となる非オピオイド鎮痛薬の乱用(同1.20、1.15〜1.26、4.34、3.22〜5.51)のリスクが上昇または上昇傾向が見られた。加えて、認知機能低下(同1.80、1.72〜1.89、10.75、9.65〜11.91)や睡眠障害(同1.41、1.38〜1.45、23.80、21.65〜26.00)のリスク上昇も認められた。

 また、複合評価項目としたなんらかの精神疾患の診断率(HR 1.46、95%CI 1.40〜1.52、RD 36.48、95%CI 31.93〜41.19)、なんらかの精神疾患治療薬の処方率(同1.86、1.78〜1.95、47.60、43.26〜52.12)、診断または処方される割合(同1.60、1.55〜1.66、64.38、58.90〜70.01)も、対照群に比べCOVID-19群でいずれも上昇していた。

 なお、これらのリスク上昇はCOVID-19急性期以降の入院例で最も高く、非入院例においても一貫して認められた。COVID-19群と歴史的対照群の比較でも、結果は同様だった。

 以上を踏まえ、Xie氏らは「今回の研究から、COVID-19の急性期以降には精神疾患のリスクが上昇することが示唆された。COVID-19の回復後も、精神疾患への取り組みを優先すべきである」と結論している。

(平山茂樹)