新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンと突発性感音難聴(SSNHL)との関連については十分なエビデンスがない。イスラエル・Lady Davis Carmel Medical CenterのYoav Yanir氏らは、ファイザー製のSARS-CoV-2ワクチン(トジナメラン)接種の数日後にSSNHLの発症が数例報告されたことなどから、同国のトジナメラン接種者260万例を対象にコホート研究を実施、両者の関連性を検討した。その結果、トジナメランがSSNHLのリスク増加に関連している可能性があることをJAMA Otolaryngo Head Neck Surg2022年2月24日オンライン版)に発表した。

約260万例のトジナメラン接種者を対象に検討

 最近、米国・Johns Hopkins Universityの研究者らは、米疾病対策センターのワクチン有害事象報告システム(VAERS)の自己報告データを用いた予備解析により、SARS-CoV-2ワクチン接種後のSSNHLの発生率は一般集団の発生率を超えず、むしろ低くなる可能性があることを報告した。ただ、SSNHLは被接種者の自己報告に基づいていたため、研究に多少の制限があり関連性が認められなかった可能性があると指摘。今回のコホート研究では、トジナメランの接種時期(1回目、2回目接種後)、性や年齢など特定の患者の因子がSSNHLのリスク増加と関連するかを評価した。

 Yanir氏らは、人口の約半数が加入する同国最大の健康維持機構Clalit Health Services(CHS)のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究により、トジナメラン接種とSSNHLとの関連を検討した。

 対象は、2020年12月20日~21年4月30日にトジナメランの1回目接種を受けた16歳以上の260万2,557例(平均年齢46.8歳、女性51.5%)。このうち244万1,719例が2021年1月10日~4月30日に2回目の接種を受けた。

接種後21日以内の1万人当たり発生数は、1回目61人、2回目56人

 ワクチン接種後21日以内に発生したSSNHLは、1回目接種後91例(10万人当たり60.77人/年)、 2回目接種後79例(同56.24人/年)が報告された。

 同国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックおよびワクチン導入前の2018年(10万人当たり41.50人/年)と2019年(同44.46人/年)のCHS集団でのデータに基づき推定したSSNHL予想症例数と比較した。2018年を参照カテゴリとした比較では、年齢および性で重み付けした標準化罹患比(standard incidencr ratio;SIR)は1回目接種後が1.35(95%CI 1.09~1.65)、2回目接種後が1.23(同0.98~1.53)であった。

1回目は女性、2回目は男性で増加、標準化罹患比は最大2.5

 性および年齢層別に解析すると、SIRはトジナメランの1回目接種後、16~44歳の女性が1.92(95%CI 0.98~3.43)と最も高く、次いで65歳以上の女性が1.68(同1.15~2.37)で続いた。2回目の接種後では、16~44歳の男性で最も高く、SIRは2.45(95%CI 1.36~4.07)だった。

 なお、2019年を参照カテゴリとした比較でも結果は類似していた。

 トジナメラン10万回接種当たりの寄与危険(attributable risk;ARF)を求めると、全般的に小さく、1回目接種後の65歳以上女性での3.74(95%CI 1.21~5.34)が最も大きかった。

関連性の証明にはさらなる研究必要

 Yanir氏らは「今回のコホート研究では、効果量は非常に小さいものの、トジナメラン接種とSSNHLリスク増加との間に関連が示唆された。両者の関連性はワクチン接種時期、性、年齢層によって異なり、1回目の接種後は女性、2回目の接種後は男性でより顕著であった。ただ、これらの関連性を証明するにはさらなる研究が必要である」と結論した。

 さらに、「こうした結果とSSNHL発症者が予後良好であった点を考慮すると、トジナメランのベネフィットがSSNHLのリスクを上回っていることが示唆される。ただし、SSNHLは永続的な難聴と耳鳴りを経験する可能性もあるため、迅速な診断・治療が不可欠であることから、得られた知見をSSNHLに関わる耳鼻咽喉科などの専門医と共有する必要がある」と付言している。

(宇佐美陽子)