英・University of OxfordのMiguel A. Fernandez氏らは、60歳以上の大腿骨頸部内側骨折患者1,225例を対象に、セメント固定半関節形成術(Hemiarhroplasty)とセメント不使用半関節形成術の有効性を比較する多施設共同ランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、セメント固定半関節形成術はセメント不使用半関節形成術に比べてQOLが有意に高かったとN Engl J Med2022; 386: 521-530)に発表した。

セメント固定は術後の痛みが少ないが、血圧低下などと関連

 股関節骨折の約半数は大腿骨頸部で発生し、その大部分は大腿骨頭を金属製インプラントで置換する部分股関節置換術(半関節形成術)で治療される。骨セメントで固定したインプラントは、セメント不使用インプラントよりも術後の痛みが少なく、可動性も良好であることが示されている。しかし、術中の骨セメント注入は患者の血圧低下リスクと関連し、まれに心血管虚脱や死亡に至ることもあるため、どちらを使用すべきかについては議論がある。

 Fernandez氏らは、セメント固定半関節形成術とセメント不使用半関節形成術における患者QOLを比較する目的で2017年3月〜21年1月に、4施設での初期フェーズ、14施設で主要フェーズとして多施設共同RCTを実施した。

 対象は、半関節形成術の施行が予定されている60歳以上の大腿骨頸部内側骨折の1,225例で、セメント固定半関節形成術を行う群(セメント使用群:610例、年齢84.5±7.6歳、女性69%)とセメント不使用半関節形成術を行う群(セメント不使用群:615例、同84.3±7.4歳、66.8%)にランダムに割り付けた。12カ月の追跡を完了したのは、セメント使用群が513例、セメント不使用群が518例だった。

 主要評価項目は、ランダム化後4カ月時にEuroQol Group 5-Dimension(EQ-5D)実用スコアを用いて測定した死亡調整後の健康関連QOL(スコア範囲-0.594~1、高スコアほどQOLが高い、臨床的に重要な最小差0.050~0.075)とした。評価項目のデータは、患者(または主介護者)との電話インタビューおよび医療記録から得た。

 副次評価項目は、1カ月後および12カ月後の健康関連QOL(EQ-5D実用スコア)、12カ月後の死亡率、合併症、退院時の居住状態などとした。

骨折発生率もセメント使用群で有意に低い

 混合効果回帰分析の結果、EQ-5D実用スコアの平均値はセメント使用群が0.371、セメント不使用群が0.315と、セメント使用群で高かった(調整後差0.055、95%CI 0.009~0.101、P=0.02)。EQ-5D実用スコアの群間差は1カ月後と4カ月後で同様だったが、12カ月後は小さくなった。

 12カ月後の死亡はセメント使用群の610例中146例(23.9%)、セメント不使用群の615例中171例(27.8%)に認められた〔オッズ比(OR)0.80、95%CI 0.62~1.05〕。

 人工関節周囲骨折は、セメント使用群の0.5%、セメント不使用群の2.1%に発生した(OR4.37、95%CI 1.19~24.00)。その他の合併症の発生はまれで、両群で同程度だった。

 自宅から入院した患者のうち、セメント使用群では425例中298例(70.1%)、セメント不使用群では400例中279例(69.8%)が退院後に自宅に戻り、両群に差は見られなかった。

 以上から、セメント固定半関節形成術ではセメント不使用半関節形成術に比べてQOLが有意に向上し、人工関節周囲骨折のリスクも低くなった。

 今回の研究について、Fernandez氏らは「過去の研究よりも規模が大きく、患者や介護者にとって重要と考えられる」と述べている。

(今手麻衣)