新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)は、2021年11月25日に南アフリカ・ハウテン州で初めて同定された。同国・South African Medical Research Council Vaccine and Infectious Diseases Analytics Research UnitのShabir A. Madhi氏らは、同州における住民7,010例の血清検体を用いてSARS-CoV-2 IgG抗体検査を実施し、オミクロン株による流行第四波の感染例の特徴や転帰を第一波~三波と比較。その結果、第四波では感染拡大が急速で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症率が比較的高かった一方で、第一~第三波に比べ入院、死亡、過剰死亡率が低かったとN Engl J Med2022年2月23日オンライン版)に報告した(関連記事「オミクロン流行、入院患者の特徴は」)。

デルタ株流行前の抗体陽性率19%

 ハウテン州はヨハネスブルクを州都とし、南アフリカの人口の26%が集中している。Madhi氏らが、2020年11月~21年1月に同州で実施した人口に基づく抗体検査(Int J Epidemiol 2021年10月30日オンライン版)では、3,453世帯6,332例の血清中のSARS-CoV-2に対するIgG陽性率は19.1%(95%CI 18.1~20.1%)だった。その後、デルタ株による第三波に見舞われた。

 同国では2021年5月にSARS-CoV-2ワクチン接種を開始、同年12月には新規感染者の98.4%をオミクロン株が占め、デルタ株からほぼ置き換わった。今回の研究では、ハウテン州における主にオミクロン株による第四波以前のCOVID-19の抗体陽性率および第四波でのCOVID-19の疫学的傾向について検討した。

追跡抗体検査と疫学動向調査を実施

 抗体検査は2021年10月22日~12月9日に実施。対象は、先述した前回調査と同じ世帯を含み、同様のサンプリング法を用いて世帯数を10%増やした。乾燥血液スポットで採取した検体を参加者から入手し、Luminex社の定量アッセイを用いてSARS-CoV-2スパイク蛋白質およびヌクレオカプシド蛋白質に対するIgGを検査した。また、南アフリカ国立感染症研究所(NICD)などのデータベースを用いて、パンデミック発生から2022年1月12日までのCOVID-19の症例数、入院、死亡記録、過剰死亡(2022年1月8日まで)などのデータを分析、COVID-19の疫学的傾向を検討した。

 対象とした3,047世帯7,498例のうち7,010例(97.9%、男性42.0%、SARS-CoV-2ワクチン接種18.8%)から検体を採取し、うち83%はオミクロン株が最初に特定された2021年11月25日までに採取した。

 年齢の内訳は、12歳未満の小児が753例(10.7%)、12~17歳が622例(8.9%)、18~50歳が4,047例(57.7%)、50歳以上が1,588例(22.7%)。

入院・死亡率:オミクロン株感染例で最低、デルタ株感染例で最高

 SARS-CoV-2に対する血清IgG陽性率は全体が73.1%(95%CI 72.0~74.1%)で、年齢別に見ると、12歳未満が56.2%(同52.6~59.7%)、12~17歳が73.8%(同70.2~77.1%)、18~50歳が73.6% (同72.2~74.9%)、50歳以上が79.7% (同77.6~81.5%)だった。

 IgG陽性率は、ワクチン接種者で93.1%(95%CI 91.6~94.3%)、非接種者で68.4 %(同67.2~69.6%)、ワクチン接種者は非接種者の1.3倍ほどであった〔リスク比(RR)1.36、95%CI 1.33~1.39〕。

 オミクロン株主体の第四波では、第一波~第三波に比べ症例数が急増したものの、罹患者は急速に減少した。第四波の発生からピークに至るまでの期間は1カ月だったのに対し、第三波では2カ月だった。

 第四波において2022年1月12日までに記録されたCOVID-19症例数は22万6,932例で、ベータ株による第二波(18万2,564例)よりも多く、第三波(51万1,638例)よりも少なかった。一方、10万人当たりのCOVID-19による入院は、第一波215例、第二波198例、第三波398例、第四波102例、死亡はそれぞれ42例、46例、92例、7例、過剰死亡は87例、77例、197例、12例と、いずれの発生率も第一波~第三波に比べ第四波では低かった。

 COVID-19流行の第一波から第四波にかけての総入院患者に占める第四波の割合は11.2%、死亡は3.9%、過剰死亡は3.3%にとどまっていた。一方、デルタ株による第三波では、それぞれ43.6%、49.3%、52.7%と最も高い割合を占めていた。

ワクチン接種進んだ国では重症度が異なる可能性も

 以上の結果を踏まえ、Madhi氏らは「オミクロン株による第四波発生の前に、南アフリカ・ハウテン州で広範なSARS-CoV-2血清反応陽性が観察された。新型コロナ対策の主要な目的を感染予防ではなく重症化や死亡の抑制に設定する場合、同国のオミクロン株による第四波の期間にCOVID-19発症率と入院・死亡率に乖離が見られたことは、COVID-19パンデミックのターニングポイントを告げるものと考えられる」と結論している。

 同国では、ファイザー製ワクチン(トジナメラン)による入院抑制効果は、デルタ株の93%に対し、オミクロン株では70%と報告されている(N Engl J Med 2022; 386: 494-6)。同氏らは「ワクチンの7割もの有効性は、ワクチン接種と自然感染によって誘導されるハイブリッド細胞性免疫によるものと思われる。オミクロン株によるCOVID-19重症化に対する同様の予防効果が、免疫獲得が主にワクチン接種による国で認められるかどうかは不確定だ」と述べている。

(坂田真子)