米・Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのGregory E. Simon氏らは、頻繁に自殺念慮を抱く患者約1万8,000例を対象に、ケアマネジメントや弁証法的行動療法(DBT)の有効性を検討する実用的ランダム化比較試験(RCT)を実施した。その結果、通常のケアと比べ、ケアマネジメントを実施しても自傷リスクの有意な減少は見られず、DBTを実施すると自傷リスクはむしろ有意に増加したとJAMA2022; 327: 630-638)に発表した。

2週間で7日以上~ほぼ毎日自殺や自傷の念慮を抱く患者を対象

 自殺行為の予防には、大規模な集団にまで拡張できる効果的な介入が必要である。ケアマネジメントや認知行動療法の1つであるDBTによる介入は有効とされるが、治療を求めたり受け入れたりすることが困難な人々を含む、より広い集団における有効性は検証されていない。

 Simon氏らは、通常のケアと比較したケアマネジメントやDBTの有効性を検討するため、米国の4施設において2015年3月〜20年3月にRCTを実施した。

 対象は2015年3月〜18年9月に、過去2週間に7日以上、またはほぼ毎日、自殺や自傷念慮を報告し患者健康質問票(PHQ-9)のスコアが2/3の成人1万8,882例で、電子健康記録(EHR)データから特定した。除外項目は、①医療保険未加入、②EHR患者ポータルメッセージ未使用、③認知症または発達障害の診断記録あり、④通訳が必要-とした。

 死亡などにより除外された238例を除く1万8,644例〔45歳以上9,009例(48%)、女性1万2,543例(67%)、精神科専門クリニックからが9,222例(50%)で残りはプライマリケアから〕を組み入れた。対象を、①系統的なアウトリーチとケアを含むケアマネジメント群(6,230例)、②DBTの4つのスキル(マインドフルネス、現在の感情に対するマインドフルネス、反対行動、ペースを保った呼吸)を導入するスキルトレーニング群(6,227例)、③通常ケア群(6,187例)-にランダムに割り付けた。介入は最長12カ月とし、主にEHRのオンラインメッセージを通じて行った。

 主要評価項目は、非致死的または致死的な自傷行為を初めて行うまでの期間とした。非致死的自傷行為は医療記録から、致死的自傷行為は州の死亡率データから確認した。

ケアマネジメント群で1.07倍、スキルトレーニング群では1.29倍

 解析の結果、ランダム化後18カ月間に計540例の自傷事象(自傷行為に起因する死亡45例、非致死的自傷事象495例)を経験した。内訳はケアマネジメント群が172例(3.27%)、スキルトレーニング群が206例(3.92%)、通常ケア群が162例(3.27%)だった。

 通常ケア群に対する18カ月間の致死的または非致死的自傷のリスクは、ケアマネジメント群で有意差はなかったが〔ハザード比(HR)1.07、97.5%CI 0.84〜1.37、P=0.52〕、スキルトレーニング群では有意に高かった(同1.29、同1.02〜1.64、P=0.015)。

 重度の自傷行為については、通常ケア群に対するHRはケアマネジメント群で1.03(97.5%CI 0.71〜1.51、P=0.84)、スキルトレーニング群では1.34(同0.94〜1.91、P=0.07)だった。

 より広範な自傷行為については、通常ケア群に対するHRはケアマネジメント群で1.10(97.5%CI 0.92〜1.33、P=0.23)、スキルトレーニング群では1.17(同0.97〜1.41、P=0.06)だった。

 以上から、通常のケアと比べ、ケアマネジメントを実施しても自傷行為のリスクは有意に減少せず、DBTを導入するスキルトレーニングを実施すると自傷行為のリスクは増加した。

 結果について、Simon氏らは「今回の知見は、医療介入による自殺リスクに対する系統的な取り組みを否定するものではない。ただし、自殺念慮を頻繁に抱く幅広い集団に対するケアマネジメントやDBTを導入するスキルトレーニングには、通常のケアに勝る利点がないことを示唆している」と述べている。

(今手麻衣)