新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が18都道府県で延長される運びとなり、6日の期限に合わせて全国一斉に解除する政府のシナリオはついえた。新規感染者数が想定に反して高止まりしているのが大きな要因だ。全面解除で社会経済活動の再開を印象付けようとしていた岸田文雄首相は思惑が外れた形となった。
 首相は3日夜の記者会見で、感染状況が「改善傾向」にあると強調。同時に「重症者が増加し、病床利用率がなお高い都道府県がある」と認めざるを得なかった。
 31都道府県で適用中の重点措置はいずれも6日が期限。ばらばらだった期限を政府が2月中旬の対策本部でそろえたからだ。政府高官は「当初のシナリオでは3日に週明けの全面解除を宣言し、『GoTo』事業の再開を打ち出して社会経済活動のアクセルを踏む想定だった」と明かす。
 目算が狂った背景には「新規感染者数の減少の緩慢さ」(厚生労働省の専門家組織)がある。例えば、東京の新規感染者数は下げ止まり、最近は前週の同じ曜日を上回る日が目立つ。2月中旬に先行解除された5県のうち、島根、大分、沖縄の3県は増加傾向に転じている。
 国内では変異株「オミクロン株」の「BA.1」系統が主流だが、海外で広がる別系統の「BA.2」に置き換われば、感染状況が急激に悪化する恐れもある。政府対策分科会の尾身茂会長は2日の参院予算委員会で「(感染第6波が)下がらないまま第7波に入る可能性も否定できない」と懸念を示した。
 オミクロン株の病原性が期待されたほど弱くなかったのも誤算だ。政府・与党内には「インフルエンザより毒性が低いかもしれない」との声もあったが、厚労省の専門家組織は2日、「致命率は季節性インフルエンザより高い」との見解を発表。実際、全国の死者数は3日に255人と「過去最高の水準」が続いている。
 新規感染者がなかなか減らない原因と専門家が指摘するのがワクチン3回目接種の遅れ。2月末で3750万人と想定していたが、実際には今月2日時点でも2810万人。首相は「2月中旬に1日100万回の接種を実現した」とするが、前政権でワクチン担当閣僚を務めた自民党の河野太郎広報本部長は2日、「スタートダッシュで転んだ」と酷評した。
 ただ、ロシア軍がウクライナを侵攻したことで、政界の注目は日本政府の対応に集まり、コロナ対策のもたつきはかすみがち。連日の参院予算委でも野党の追及の矛先は鈍く、立憲民主党では「今は攻めにくい」(閣僚経験者)との声も漏れる。 (C)時事通信社