ナトリウム(Na)摂取過多のリスクを考え上では、食生活に気を付けるだけでは不十分で、薬物治療にも配慮する必要がある。中国・Central South UniversityのChao Zeng氏らは、Na含有の有無別にアセトアミノフェンが心血管イベントに及ぼす影響を検証した結果をEur Heart J2022年2月24日オンライン版)に発表した。Na含有アセトアミノフェンを服用した者では、高血圧既往の有無にかかわらず、心血管イベント(CVD)および死亡のリスクが高かった〔関連記事(解説):「「Na含有アセトアミノフェン」の問題に迫る」〕

多量のNaを含有するアセトアミノフェンも  

 Naの過剰摂取はCVDのリスクを上昇させることが広く知られている。鎮痛薬として用いられるアセトアミノフェンには、Na含有製剤と非含有製剤があり、含有製剤ではアセトアミノフェン0.5gの発泡剤で0.44g、可溶化剤で0.39gのNaが含まれるとされる。すなわち、アセトアミノフェン4g/日を服用すると、Naもそれぞれ3.5g、3.1g摂取することになり無視できない量である。 

 そこでZeng氏らは今回、Na含有の有無別にアセトアミノフェン服用者における心血管イベントのリスクを、高血圧既往ありとなしの2つのコホートを用いて検証した。

 主要評価項目は初回処方後1年間のCVDおよび全死亡リスク。対象は、英国のプライマリケアの電子医療記録データベースThe Health Improvement Network(THIN)に2000年1月~17年12月に1年以上登録された者で、市販のアセトアミノフェンについてはTHINには記録されないため、アセトアミノフェン使用分類のミスを最小化する目的で国民保険サービスを無料で受けられる60歳以上とした。アセトアミノフェン服用開始前のがんやCVD(心筋梗塞、脳卒中心不全)既往例は除外した。

 高血圧既往患者(15万1,398例)、非高血圧既往患者(14万7,299例)について、それぞれアセトアミノフェンのNa含有の有無でNa群(高血圧既往患者4,532例、非高血圧既往患者5,351例)と非Na群(同14万6,866例、14万1,948例)に分類。アセトアミノフェンの初回処方日をindex dateとして1年間追跡し、CVDおよび全死亡リスクを評価(主要評価項目)した。

 CVDおよび全死亡リスクは、交絡因子を考慮した上で、各個人が特定の治療を受ける確率を表す傾向スコアにより算出された加重平均ハザード比(HR)を用いて検証した。

 ベースライン時の主な患者背景は、平均年齢が高血圧既往患者ではNa群74.3歳/非Na群73.3歳、非高血圧患者ではそれぞれ72.1歳/70.8歳、女性が70.7%/61.0%、67.7%/58.8%などで、傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法(IPW)による調整後はおおむねバランスが取れていた。

Na群で1.5倍程度のCVDリスク上昇

 解析の結果、CVDは高血圧既往患者ではNa群5.6%、非Na群4.6%に発生し、リスク差(RD)1.0%ポイント(95%CI 0.9~1.1%ポイント)、ハザード比(HR)1.59(95%CI 1.32~1.92)と、Na群でリスクが高かった。CVDのHRを個別に見ると、心筋梗塞が1.41(95% CI 1.28~1.56)、脳卒中が1.59(同1.20~2.09)、心不全が1.44(同1.13~1.83)で、いずれもNa群でリスクが高かった。

 この結果は、非高血圧既往患者でも同様であり、CVDはNa群4.4%、非Na群3.7%に発生し、RD 0.7%ポイント(95%CI 0.6~0.8%ポイント)、HR 1.45(同1.18~1.79)、CVDのHRを個別に見ても心筋梗塞が1.27(同1.17~1.38)、 脳卒中が1.43(同1.08~1.91)、心不全が1.30(同1.14~1.57)と、いずれもナトリウム群でリスクが高かった。

死亡リスクは2倍程度の上昇

 全死亡率でも結果は同様だった。高血圧既往患者ではNa群7.6%、非Na群6.1%、非高血圧既往患者ではそれぞれ7.3%、5.9%。高血圧既往患者、非既往患者の順にRDは1.6%ポイント(95%CI 1.5~1.7%ポイント)、1.4 %(1.2~1.6%ポイント)、HRは2.05(同1.92~2.19)、1.87(1.74~2.00)といずれもNa群で死亡リスクが高かった。

 また、Na群におけるイベントリスクの上昇は、用量依存性の傾向を示した。高血圧既往患者のCVDのオッズ比(OR)は、処方回数が1回、2~4回、5回以上でそれぞれ1.26、1.33、1.45(傾向性のP=0.034)、死亡のORは2.77、3.02、3.64(傾向性のP<0.001)で、非高血圧既往患者でも同様の結果が得られていた。

 以上の結果を踏まえ、Zeng氏は「Na含有アセトアミノフェンの服用により、高血圧既往の有無にかかわらず、CVDおよび全死亡リスクが高まることが示された。今回の知見に基づくと、Na含有製剤の服用による不必要なNa摂取は避けた方が望ましい」と述べている。

(編集部)