一般社団法人日本キャンサーアピアランスケア協会は2月25日、東京都で設立記者会見を開催。設立の意図や今後の取り組みを発表した。

見た目の変化に対する周囲の反応で起こる苦痛

 日本人の2人に1人ががんに罹患する時代となり、治療薬の進歩により化学療法を選択する患者数が増加した。生存率が延長し、治療を受けながら日常生活を送るがん患者が増えた一方、化学療法に伴う身体症状の悩みとして、上位20項目中6割を外見症状が占めるとの報告がある(Psychooncology 2013; 22: 2140-2147)。乳がん患者1,478例の調査では、9割以上が化学療法による脱毛経験ありと回答しており、治療後2年以上経過した時点での発毛の完全回復例は3~4割程度、4割は70%以下の発毛回復にとどまるとの報告もある(PLoS One 2019; 14: e0208118)。また、治療中は毛髪だけでなく眉毛やまつ毛も抜け、皮膚障害(色素沈着、発疹)なども起こるため容貌が著しく変化する。

 湘南記念病院(神奈川県)乳がんセンターセンター長の土井卓子氏(同協会理事長)氏は「がん患者は自分の見た目の変化に加え、それに対する周囲の反応によって引き起こされる対人関係の崩壊に苦痛を覚える」と強調。その上で「外見の変化に苦しむ全てのがん患者や家族、医療者、さらには美容・理容業界の方々に適切なアピアランスケアに関する情報を行き渡らせ、外見の保持とQOLの向上に寄与すべく協会設立に踏み切った」と述べた。

 NPO法人子宮頸がんを考える市民の会理事長の渡部享宏氏(同協会理事)は「われわれと同じ方向を向いてアピアランスケアについて考え、知恵を出し合い、発信していく仲間を募集していきたい」と呼びかけた。

アピアランスケアに関わる医療従事者の横連携強化へ

 婦人科がん患者会よつばの会代表の原千晶氏(同協会理事、ビデオ出演)は、自らの子宮頸がん・子宮体がん治療経験を振り返り、「最近はがん患者へのアピアランスケアや正しい情報共有の重要性に対する認識の高まりを感じている」とコメント。加えて「がん患者の中にはアピアランスケア自体を知らない人も多い。アピアランスケアの周知がたくさんの人の光となることを願う」と展望した。

 乳がん罹患経験から、現在はがん患者の美容サポート活動を務める美容ジャーナリストの山崎多賀子氏(同協会理事)は「治療中、自分の顔を見たときの周囲の反応を想像して不安になった。しかし、外見をメイクでリカバーして罹患を知らない知人に会うと『前よりきれいになった』と言われ、心が晴れた」と経験を語った。その上で「がん患者や医療者だけでなく、社会全体にアピアランスケアについて広く発信し、がん患者の外見の変化に対する認識を共有して支援する必要がある。われわれは、そのために活動していきたい」と主張した。

 同協会の発起人である大阪大学大学院保健学招聘教授の小林忠男氏(同協会理事)は、以前に北欧でがん治療中の脱毛対策として頭皮冷却療法を受ける患者を目の当たりにし、日本にも取り入れたいと強く思ったという。現在では日本人向けの頭皮冷却装置が開発され(関連記事:「リーブ21、国産初の頭皮冷却装置を発売」)、『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版』にも頭皮冷却療法を周術期化学療法を行う乳がん患者に限定して弱く推奨するとの記述がある。同氏は「これからもアピアランスに悩む患者の力になりたい。医療者だけでなく、多くの立場の方々からのご支援、ご協力をお願いしたい」と訴えた。

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(左から)山崎氏、小林氏、土井氏、渡部氏

 既にアピアランスケアに関する部署が設置されている施設はあるものの、医師や看護師の横連携を全国的につなぐ取り組みの実施は、同協会が初だという。主に、がん患者・がん経験者ニーズの可視化、がんアピアランスケアに関する情報やデータの収集・公開を中心に活動していくという。今年(2022年)5月にはアピアランスケアの最新知見を共有するウェブイベントも予定。将来的には医療者とがん経験者の意識調査で双方のニーズを洗い出し、結果によっては政府への政策提言につなげたいとしている。

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(編集部)

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