ベジタリアン(菜食主義者)ではがん発症リスクが低いことを示唆する報告がある一方、特定のがん腫に限定的とも指摘される。英・University of OxfordのCody Z. Watling氏らは、大規模前向きコホート研究によりベジタリアンと非ベジタリアンにおける全がんおよび大腸がんなどの発症リスクを検討した。結果を、BMC Med2022; 20: 73)に報告した。

47万人超を肉食、魚介食、菜食に分けて検討

 栄養とがんとの関連を検討した大規模試験EPIC-Oxfordなどでは、肉食の人に比べ菜食の人は全がん発症リスクが低いことが示されているが、がん種別のリスクは解明されていない、とWatling氏ら。また、ベジタリアンの中でも魚介類を食べるペスクタリアン(魚菜食主義者)で同様の報告があるものの、がん種別の明確なエビデンスは得られていないという。

 そこで同氏らは、UK Biobankに登録された者のうち、がんの診断を受けていない47万2,377人に対し、食事摂取に関するアンケートを実施。結果に基づき、①通常肉食群(加工肉および赤身肉などの摂取が週5回超)24万7,571人、②低肉食群(同5回未満)20万5,385人、③魚介食群(非肉食・魚介のみ)1万696人、④菜食群(非肉食・非魚介食)8,685人―の4群に分け、全がんおよび大腸がん、閉経後乳がん、前立腺がんの発症リスクとの関連を検討した。

 対象の主な背景は、平均年齢が通常肉食群56.0歳、低肉食群56.9歳、魚介食群54.0歳、菜食群53.0歳で、女性の割合はそれぞれ46.4%、61.4%、71.7%、65.9%、平均BMIは27.9、27.0、25.3、25.7だった。

低肉食群、魚介食群、菜食群で全がんリスク低下

 平均11.4年の追跡期間中に5万4,961件のがん発症が確認された。内訳は大腸がん5,882件、閉経後乳がん7,537人、前立腺がん9,501人であった。

 Cox比例ハザード回帰分析により、通常肉食群に対する各群の全がんおよび大腸がん、閉経後乳がん、前立腺がんの発症リスクを検討した。その結果、全がん発症の調整後ハザード比(HR)は、低肉食群が0.98(95%CI 0.96〜1.00)、魚介食群が0.90(同0.84〜0.96)、菜食群が0.86(同0.80〜0.93)といずれもリスクの有意な低下が認められた(異質性のP<0.001)。

 がん種別の検討では、大腸がんのリスク低下は低肉食群(HR 0.91、95%CI 0.86〜0.96)でのみ示されたが、男性でのみ有意差が確認された(異質性のP=0.007)。乳がんでは菜食群の女性(HR 0.82、95%CI 0.68〜0.99)でリスクの低下が認められたものの、BMIを調整すると有意差は消失した。前立腺がんでは魚介食群(同0.80、0.65〜0.99)および菜食群(同0.69、0.54〜0.89)の男性でリスクの有意な低下が確認された(異質性のP=0.003)。なお、媒介分析の結果、BMIの可能性が示唆された。

 以上から、Watling氏らは「通常肉食群に比べ、低肉食群、魚介食群、菜食群ではいずれも全がん発症リスクが低いことが示された」と結論。その上で、「低肉食群において大腸がんリスクが低いという結果は従来の報告と合致する。また、菜食主義の女性で閉経後乳がんリスクが低い理由は、BMIの低さで説明が付く」と付言し、「今後は、より大規模な菜食者集団での検討が必要」との見解を示している。

松浦庸夫