胃がんに対する腹腔鏡下幽門速胃切除術は1991年に日本で開発され、早期胃がんに対しては標準療法として推奨されている一方、進行胃がんに関するエビデンスは十分ではなかった。国内第Ⅱ/Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)JLSSG0901では、進行胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除術の安全性と根治性を国際的標準治療である開腹手術を対照に比較。第94回日本胃癌学会(3月2〜4日、ウェブ併催)で大分大学消化器・小児外科講座准教授の衛藤剛氏らは、同試験の主要評価項目である5年無再発生存(RFS)の成績を初めて報告。腹腔鏡下幽門側胃切除術の開腹手術に対する非劣性が証明されたことを明らかにした。

短期成績で腹腔鏡下術の安全性を報告

 JLSSG0901試験は腹腔鏡下胃切除術研究会が中心となり2009年9月に国内16施設で開始され、最終的に37施設が参加した。対象は幽門側胃切除術で治癒切除が可能な20〜80歳の進行胃がん患者。深達度は固有筋層(MP)〜漿膜外浸潤(SE)で遠隔転移を認めずリンパ節転移はN0〜2、領域はM、L、ML、LMで、全身状態(PS)0〜1、BMIは30未満などが適格とされた(『胃癌取扱い規約 第13版』に基づく)。

 安全性を担保するため、術者は日本内視鏡外科学会の技術認定取得医で、20件以上のD2リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術を行っている施設で、50件以上のD2リンパ節郭清を伴う開腹幽門側胃切除術の経験を持つ外科医とされた。

 試験は第Ⅱ相でD2リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術の安全性を確認した上で第Ⅲ相に進むこととされた。主要評価項目は、第Ⅱ相では膵液瘻と縫合不全の発生割合、第Ⅲ相では5年RFSだった。

 第Ⅱ相では180例が登録され、開腹手術を行う開腹群89例と腹腔鏡下手術を行う腹腔鏡群91例にランダムに割り付けて検討。縫合不全または膵臓瘻を有する患者は86例中4例(4.7%)と安全性が認められたため(World J Surg 2015; 39: 2734-2741)、第Ⅲ相に進められた。

 第Ⅲ相では507例が登録され、開腹群255例と腹腔鏡群252例にランダムに割り付けられた。2017年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2017)において、腹腔鏡群では出血量、術後の鎮痛薬の使用が有意に少なく、初回排ガスまでの日数も有意に短いなど、良好な短期成績が報告されている。

今後、局所進行胃がんの標準治療となる可能性

 今回は長期成績の結果が速報として報告された。有効性解析対象は開腹群254例、腹腔鏡群248例で、年齢中央値はそれぞれ67歳(範囲33〜80歳)、64歳(同34〜80歳)、男性168例、169例、腫瘍経中央値はいずれも4cm(同3〜5cm)で、患者背景に両群で差はなかった。

 術式やD2以上のリンパ節郭清の割合、郭清リンパ節数、他臓器切除や輸血の頻度などに差はなかった。手術時間中央値は開腹群の205分(四分位範囲175〜240分)に対して腹腔鏡群では291分(同175〜240分)と有意に長かったが、出血量中央値は開腹群の141mL(同 80〜270mL)に対して腹腔鏡群では30mL(同10〜90mL)と有意に少なかった(全てP<0.001)。

 主要評価項目である5年RFSのハザード比(HR)は0.9556(90%CI 0.7226〜1.2637)で、CIの上限値が事前に設定された非劣性マージン1.31を下回ったことから非劣性が認められた(非劣性のP=0.0317)。全生存(OS)のHRは0.83(95%CI 0.57〜1.21)であり、衛藤氏は「OSは腹腔鏡群がやや良好」と述べた。

 病理学的結果に有意差はなく、再発部位についても差はなかった。今後は臨床病期Ⅲ期の症例やT4症例、N3症例、肥満例など、サブグループ解析が進められるという。

 既に中国や韓国において、前向きRCTの長期成績により進行胃がんを対象とした開腹手術に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術の非劣性が示されていたが、JLSSG0901試験の結果から、日本においても同様に非劣性が証明されたことになる。同氏は「腹腔鏡下胃切除術の適応拡大に向けた、マイルストーンとなる重要な結果が得られた。直ちに臨床応用とされるわけではないが、ガイドライン改訂などを経て局所進行胃がんの標準治療となる可能性がある」と結論した。

(安部重範)