日本小児科学会は、日本国内で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した15歳以下の小児患者約5,100例について解析した結果をCOVID-19レジストリ調査の中間報告(第3報)としてまとめ、3月7日に公表した。オミクロン株流行期における小児COVID-19患者の臨床症状や重症度、従来株や他の変異株による感染例との違いなどを報告した。小児COVID-19患者では重症化傾向は確認されなかった一方で、発熱、痙攣、咽頭痛、悪心・嘔吐などの頻度が、SARS-CoV-2流行初期やデルタ株流行期より増加しており、同学会では「今後、オミクロン株のさらなる流行拡大による小児COVID-19患者の絶対数の急激な増加が、臨床症状や重症度に与える影響を引き続き注視していく必要がある」としている。

コロナ流行初期、デルタ株流行期と比較、63%が入院管理実施例

 同学会予防接種・感染症対策委員会では、学会員の協力を得て2020年5月22日から国内小児における「コロナウイルス感染症2019 (COVID-19)レジストリ調査」を継続(後ろ向き調査を含む)しており、2022年2月28日時点で5,472例の小児例が報告されている。厚生労働省によると、国内における同時期の小児COVID-19患者数は104万2,571例であり、理論上、国内の小児例の0.5%が登録されている。

 今回の調査は、2021年12月28日に公表された「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)症例の臨床経過、特に心臓関連の合併症に関する検討」の中間報告(第2報)」に続くもの。

 同調査では、2020年2月1日~22年2月20日に同レジストリに登録した0~15歳のCOVID-19患者5,129例を解析対象とした。主要な流行株により解析期間を、①流行初期(2020年2月~21年7月)1,830例 (55.2%)、②デルタ株流行期 (2021年8~12月) 1,241例 (24.2%)、③オミクロン株流行期 (2022年1~2月20日) 1,058例(20.6%)ーに3分類。 COVID-19の臨床症状および重症度を、年齢層別に1歳未満、1~4歳、5~11 歳、12~15歳に分けて比較した。

 年齢中央値は6歳5カ月(四分位範囲2歳3カ月~10歳9カ月)、年齢分布は1歳未満が677 例(13.2%)、1~4歳が1,435例 (28.0%)、5~11歳が2,072例(40.4%)、12~15 歳が945例(18.4%)だった。対象の47.2%が女児で、62.6%に入院管理が行われていた。

オミクロン株流行期:発熱が8割と高頻度も、入院割合は低い

 COVID-19の重症度について解析した結果、入院を要した割合は流行初期は79.4%、デルタ株流行期は53.4%、オミクロン株流行期は28.6%と経時的に減少傾向が認められた。ただし、流行初期には隔離や経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高く、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」としている。実際、小児集中治療室(PICU)入室率に、各流行時期で大きな変化は認められなかったという。

 臨床症状については、流行初期、デルタ株流行期、オミクロン株流行初期のいずれにおいても高頻度で見られたのが発熱。中でもオミクロン株流行期には80.6%と、流行初期41.0%、デルタ株流行期58.7%に比べ大幅な増加が認められた。オミクロン株流行期で発熱に次いで頻度が高かったのは、乾性咳嗽32.3%(流行初期23.6%、デルタ株流行期28.7%)、鼻汁26.6%(同24.5%、22.8%)、咽頭痛26.1%(同8.6%、13.1%)、湿性咳嗽19.2%(同13.9%、19.4%)の順だった。

オミクロン株流行期には小児で痙攣を来しやすい

 これらの症状以外で、オミクロン株に目立ったのは痙攣。頻度は、熱性痙攣の好発年齢である1~4歳で9.4%と、流行初期の1.3%、デルタ株流行期の3.0%より増加していた。さらに、5~11歳の年長児においても、オミクロン株流行期は3.5%と流行初期の0.4%、デルタ株流行期の0%に比べて増加しており、同学会では「オミクロン株が流行の中心になってから、年長児も含めて痙攣を起こしやすくなったことが想定される」と考察している。

 また、オミクロン株流行期には、特に5~11歳の小児で悪心・嘔吐の割合が増加 (14.5%)し、一部は補液や入院管理を要した。全体では9.9%(流行初期4.2%、デルタ株流行期5.6%)だった。

 その一方で、デルタ株流行期までの小児COVID-19患者に特徴的な症状として、主に年長児以降で生じていた味覚障害、嗅覚障害は、オミクロン株流行期における頻度はそれぞれ0.7%、0.5%とほとんど見られなかった(流行初期それぞれ4.1%、3.4%、デルタ株流行期3.9%、4.2%)。肺炎の合併は成人と比べ頻度が低く、調査期間を通じて変化はなかった(流行初期1.1%、デルタ株流行期1.6%、オミクロン株流行期1.3%)。

 これらを踏まえ、同学会では「レジストリに登録されているのは国内小児COVID-19症例の0.5%にすぎず、国内には未登録の軽症外来患者が多数存在すると推定される。このことから、レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定されるにもかかわらず、オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」と結論している。

(小沼紀子)