デンマーク・Nordsjællands University HospitalのCaroline H. Nørgaard氏らは、2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬の投与が認知症発症に及ぼす影響を検証し、Alzheimers Dement(2022; 8: e12268)に発表。GLP-1受容体作動薬による糖尿病治療は、認知症の発症リスクを低減すると報告した。

RCTとレジストリのデータを解析  

 糖尿病患者における認知症発症リスクは、非糖尿病者の2倍前後とされる。GLP-1受容体作動薬は糖尿病管理に有用なだけでなく、認知機能障害のリスク低減を示唆する報告があるなど期待されるものの、認知症の発症そのものの低減効果があるかはよくわかっていない。  

 そこでNørgaard氏らは、次の2つを解析することで、GLP-1受容体作動薬の投与がその後の認知症発症に影響するかを検証した。2件は、①2型糖尿病患者を対象に心血管イベント予防効果についてGLP-1受容体作動薬(GLP-1群)とプラセボ(プラセボ群)を比較したランダム化比較試験(RCT)3件の統合(リラグルチドのLEADER、またはセマグルチドのSUSTAIN-6およびPIONEER 6)、②デンマーク国立処方レジストリのデータ-とした。

RCTのプール解析で認知症リスクを53%抑制

 RCTのプール解析では、1万5,820例(GLP-1群7,907例、プラセボ群7,913例)を対象とした。GLP-1群とプラセボ群の主な患者背景は、それぞれ男性が64.6%、64.1%、70歳未満が75.2%、73.9%、70~80歳が22.3%、23.6%、80~90歳がともに2.5%、糖尿病の平均罹患期間がともに13.5年、既往歴は脳卒中が15.5%、16.4%、心筋梗塞が32.3%、32.0%、高血圧が91.9%、91.2%、慢性腎臓病(CKD)が2.4%、2.2%であった。

 中央値で3.61年の追跡期間中に、GLP-1群15例、プラセボ群32例が認知症を発症した。Cox回帰分析により算出したハザード比(HR)は0.47(95%CI 0.25~0.86)で、プラセボ群と比べてGLP-1群では認知症発症リスクを53%抑制していた。

二次治療の中で、GLP-1受容体作動薬が最も認知症リスク低減に寄与

 一方、デンマーク国立処方レジストリの解析では、メトホルミンによる一次治療を終え、二次治療を開始後5年以上経過した12万54例を対象とした。

 中央値で7.4年の追跡期間中に、4,849例が認知症を発症した。認知症発症例1例ごとに年齢、性などを調整して10例の対照を選出。認知症群4,849例と対照群4万8,506例について、GLP-1受容体作動薬を含めた二次治療が認知症発症に及ぼす影響を検証した。

 認知症群と対照群の主な患者背景は、男性がともに47.4%、年齢は70歳未満がともに26.4%、70~80歳がともに46.8%、80~90歳がともに26.0%、糖尿病の罹患期間中央値がともに6.0年、GLP-1受容体作動薬による治療期間は0年がそれぞれ94.3%、91.9%、1~2年が1.2%、1.3%、2~3年が0.7%、1.2%、3~4年が0.7%、1.0%、4~5年が1.5%、2.2%だった。その他、既往歴は脳卒中が認知症群15.7%、対照群11.6%、心筋梗塞がそれぞれ10.9%、10.8%、高血圧が67.1%、65.9%、CKDが4.8%、4.7%だった。  

 既往歴などを調整し二次治療の治療薬ごとに対照群に対する認知症発症のHRを算出すると、インスリン群では1.01(95%CI 1.00~1.03)、SU薬群では0.98(同0.97~1.00)、DPP-4阻害薬群では0.98(同0.95~1.00)、グリニド系薬群では0.95(同0.89~1.02)だったのに対し、GLP-1群では0.89(同0.86~0.93)と最もリスクが低かった。GLP-1受容体作動薬による良好な認知症の発症抑制効果は、性、年齢、インスリン使用歴など別に見たサブグループ解析でも一貫して認められた。

 なおSGLT-2阻害薬については、治療期間が短かったことから解析結果に含まなかった。  

 以上の結果を踏まえ、Nørgaard氏らは「GLP-1受容体作動薬による2型糖尿病患者における認知症発症抑制効果がRCTのプール解析およびレジストリデータの両方で示された。今回の結果は、より検出力があるRCTの実施を支持するものである」と述べている。

(編集部)