肝硬変を伴わない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する2型糖尿病患者では、多変量調整後の重症低血糖リスクが26%上昇することが示された。韓国・Yonsei University College of MedicineのJi-Yeon Lee氏らが、同国国民健康保険公団(NHIS)の健康診断で特定された成人の2型糖尿病190万例超を対象とした後ろ向きコホート研究で、NAFLDと重症低血糖との関連を検討した結果をJAMA Netw Open2022; 5: e220262)に発表した(関連記事「NAFLDは軽度でも死亡リスクを上昇」)。

2型糖尿病患者の非肝硬変NAFLDと低血糖との関連は不明

 NAFLDは世界の成人の25%が罹患していると推定される代謝性肝疾患で(Hepatology 2016; 64: 73-84)、肥満インスリン抵抗性と関連するため、世界の2型糖尿病患者の推定合併率は55.5%(95%CI 47.3~63.7%)に上る(J Hepatol 2019; 71: 793-801)。これまでの研究で、肝硬変低血糖と関連することが示されているが、2型糖尿病患者に併存する非肝硬変のNAFLDと低血糖との関連は検討されていない。

 Lee氏らは、韓国の全人口5,000万人超が加入するNHISのデータを用いて、人口に基づく全国コホート研究を実施。対象は2009年1月~12年12月にNHISの健診を受け、ベースライン時または追跡期間中に2型糖尿病糖尿病治療薬の処方または空腹時血糖値126mg/dL以上と定義)が確認された20歳以上の194万6,581例(男性57.8%)で、2015年12月まで追跡した。低血糖の発生に影響する可能性がある大量飲酒、B型/C型肝炎キャリア、肝硬変、膵炎、肝/胆管/膵がんの既往などは除外した。

 ベースライン時の脂肪肝指数(FLI)をNAFLDの代理マーカーとして使用。主要評価項目は、重症低血糖イベント(低血糖の一次診断による入院または救急受診)とし、Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)を算出した。

FLI上昇に伴い調整リスクはJ字型示す

 中央値5.2年(四分位範囲4.1~6.1年)の追跡期間中に、4万5,135例(2.3%)が重症低血糖イベントを1回以上経験した。重症低血糖を来さなかった群(190万1,446例)は平均年齢が57.2歳、BMIが25.1だったのに対し、来した患者はより高齢で低体重だった(同67.9歳、24.2、全てP<0.001)。

 交絡因子が未調整の解析では、FLIの上昇に伴い重症低血糖リスクは徐々に低下した。しかし、年齢、性、喫煙・飲酒習慣、運動、BMIを調整後はパターンが逆転し、FLIと重症低血糖との間にJ字型の関連を示した。さらに、過去3年間の重症低血糖インスリン/SU薬/グリニド薬の使用、高血圧/慢性腎臓病(CKD)/心血管疾患(CVD)の既往を調整後の重症低血糖リスクは、FLIが最低の第1十分位群に対し、第5十分位群から徐々に上昇に転じ〔調整後HR(aHR)0.86、95%CI 0.83~0.90〕、第9十分位群(aHR 1.02、同0.96~1.08)から第10十分位群(aHR 1.29、同1.22~1.37)で急上昇した。第9十分位群のカットオフ値は、男性が83.5、女性が70.4だった。

女性と低体重でより高リスク

 ①FLI 30未満(非NAFLD群2万2,213例)、②FLI 30~59(1万4,632例)、③FLI 60以上(NAFLD群8,290例)―の3群に分けて先述した完全調整モデルで比較した結果、NAFLD群では、非NAFLD群に比べて重症低血糖リスクが26%上昇した(aHR 1.26、95%CI 1.22 ~1.30)。

 サブグループ解析では、女性および低体重例でNAFLDと重症低血糖リスクとの関連がより強かった。非NAFLD群に対するNAFLD群の重症低血糖リスクは、男性の17%上昇に対し(aHR 1.17、95%CI 1.12~1.23)、女性では29%上昇(同1.29、1.23~1.36)とより顕著だった。また、BMI18.5未満の低体重例では71%上昇した(同1.71 、1.02~2.88)。

 さらに、肝線維症の代理マーカーとしてAST/ALT比(カットオフ値0.8)を使用して解析。AST/ALT比0.8未満の非NAFLD群に対して0.8以上のNAFLD群では、重症低血糖リスクが38%上昇し(aHR 1.38、95%CI 1.31~1.45)、進行したNAFLD患者で重症低血糖の発生リスクが高いことが示唆された。

低血糖リスク評価でNAFLDを考慮

 以上の結果から、Lee氏らは「NAFLDは、肥満の状態にかかわらず2型糖尿病患者の重症低血糖リスクと関連していた。この関連性は、女性と低体重例でより強かった。2型糖尿病患者の低血糖リスクを評価する場合は、NAFLDを考慮する必要がある」と結論している。

 この研究では、2型糖尿病患者において低体重のNAFLDと重症低血糖との有意な関連が示された。同氏らは「非肥満性NAFLDの有病率は10~20%と報告されているが、肥満性NAFLDと比べた組織学的重症度や臨床転帰に関する一致した見解は得られていない。低BMIの2型糖尿病患者は栄養不良と慢性疾患が併存する可能性があり、低血糖を発症しやすい可能性がある」とコメントしている。

 また同氏は、NAFLDと重症低血糖との関連を説明する可能性があるメカニズムの1つとして、糖代謝の変化を挙げており、「NAFLDで生じる高グルカゴン血症は、肝グルカゴン受容体のダウンレギュレーションを惹起するか、肝グルコース産生の低血糖に対する逆調節反応を減弱させうる。加えて、NAFLDは酸化ストレス増強を介して血糖変動に関連すると思われる」と考察している。

(坂田真子)