授乳経験が母親の心血管疾患(CVD)リスク低下に関連することは、これまでの研究で報告されているが、授乳期間と脳卒中との関連はあまり検証されていない。中国・Zhejiang University School of MedicineのZiyang Ren氏らは、同国の前向きコホート研究における閉経後の経産婦約13万例のデータを用いて脳卒中のサブタイプごとに授乳期間との関連を検討。授乳の経験がない女性と比べ、生涯授乳期間が7カ月以上の女性では、脳卒中特に虚血性脳卒中の発症リスクが有意に低下していたことをJAMA Netw Open2022; 5:e220437)に報告した。

虚血性脳卒中、ICH、SAHの別に検討

 Ren氏らは今回、China Kadoorie Biobank研究のデータを用いた。同研究は、中国における一般的な慢性疾患の遺伝的・環境的因子を検討するために、英・University of Oxfordと中国・Chinese Academy of Medical Sciencesが共同で実施している前向き住民研究で、2004~08年に中国の10地域で30~79歳の男女51万例を登録し追跡を続けている。

 登録時に脳卒中既往がなく出産歴がある閉経後女性12万9,511例〔年齢中央値58.3歳、四分位範囲(IQR)54.0~64.6歳〕のデータを抽出した。授乳期間で、授乳経験なし、7カ月未満、7~12カ月、13~18カ月、19~24カ月、24カ月超の6群に層別化。新規脳卒中発症については、疾患登録および健康保険請求データ(2008~15年)から割り出した。

 主要評価項目は、脳卒中全体、虚血性脳卒中頭蓋内出血(ICH)、くも膜下出血(SAH)で、生涯、1児当たり平均、第1子の授乳期間の別に脳卒中発症と授乳期間との関連を検討。多変量Cox回帰分析により、脳卒中全体とそれぞれのサブタイプにおける調整後ハザード比(aHR)を算出した。

生涯、1児平均、第1子のいずれでもリスク低下と関連

 10年の追跡期間に1万5,721例が新規に脳卒中を発症した。脳卒中サブタイプは、虚血性脳卒中1万3,427件、ICH 2,567件、SAH 284件で、生涯授乳期間の中央値は、虚血性脳卒中が42.0カ月(IQR 24.0~70.0カ月)、ICHが54.0カ月(同36.0~84.0カ月)、SAHが36.0カ月(同24.0~64.5カ月)だった。

 授乳経験がない女性と比べ、生涯授乳期間が7カ月以上の4群では、脳卒中全体のaHRは0.53(95%CI 0.50~0.55)から0.66(同0.61~0.71)で、虚血性脳卒中とICHのリスクが低かった。aHRは虚血性脳卒中が0.52(95%CI 0.50~0.55)から0.64(同0.59~0.69)、ICHが0.56(同0.49~0.63)から0.78(同0.64~0.96)だった。

 SAHに関しては、生涯授乳期間が24カ月超の群でのみ関連が認められた(aHR 0.61、95%CI 0.47~0.79)。

 1児当たりの平均授乳期間と第1子の授乳期間についての検討でも、授乳期間が7カ月以上の群では、脳卒中全体およびサブタイプのリスクが低下した。

 年齢による層別化後の解析でも結果は同じだった。

 Ren氏らは「今回のコホート研究において、授乳経験は脳卒中リスクの低下、特に虚血性脳卒中リスク低下に有意に関連していた。この結果は、脳卒中予防策の1つとして母乳哺育を奨励することの重要性を示唆している」と結論している。

(小路浩史)