妊婦は自傷行為リスクが高まると指摘されている一方で、解明されていない部分が多い。英・University of ManchesterのHolly Hope氏らは、同国の260万人超の大規模データを用いた後ろ向きコホート研究で周産期および産後1年間の自傷リスクについて解析し、結果をBr J Psychiatry2022年3月1日オンライン版)に発表した。

登録時15〜45歳の女性を最長約28年追跡

 女性の自傷行為は自殺リスクを最大50倍に高めるという。英国では2014〜16年に妊婦(妊娠中および産後1年)10万人当たり2.9件の自殺が発生し、妊婦の死因の18%を占めた。また、妊婦のメンタルヘルスが児に及ぼす影響も懸念される。こうした背景から、Hope氏らは妊婦の自傷行為の現状を把握し適切な策を講じるため、大規模データを用いて後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は同国の外来データベースClinical Practice Research Datalink and Pregnancy Registerに、1990年1月1日〜2017年12月31日に15〜45歳で登録された女性266万6,088人。非周産期、周産期および産後1年間における自傷行為リスクを検討した。精神疾患(うつ病、不安障害、依存症など)についてもデータを収集した。

 1,471万2,319人・年(中央値4.03年、最長27.9年)の追跡期間中に妊娠は110万2,040件、自傷イベントは5万7,791件発生した。ベースラインの自傷行為発生率は1,000人・年当たり3.90件(95%CI 3.87〜3.93件)で、薬物の過剰摂取が最多を占めた。

周産期は自傷リスク半減、若年層では微増

 自傷行為リスクを非周産期と周産期で比較したところ、それぞれ1,000人・年当たり4.01件、2.07件であった。非周産期に対する周産期の自傷リスクを求めた結果、ハザード比(HR)は0.50(95%CI 0.47〜0.53)、暦年齢、母体年齢、登録地域、精神疾患などを調整後のHRは0.53(同0.49〜0.58)と、いずれもリスクの有意な減少が認められた(全てP<0.0001)。

 産後についても同様に検討した。その結果、調整後HRは産後0〜3カ月が0.99(95%CI 0.91〜1.07)、同3〜6カ月が0.97(0.90〜1.03)、同6〜12カ月が1.08(1.02〜1.15)と、有意差は示されたなかった。ただし、5歳ごとの年齢層別の解析では、15〜19歳の周産期女性でのみ調整後HRが0.95(95%CI 0.84〜1.07)と、有意差はなかったもののわずかながらリスクが上昇した。一方、精神疾患を有する周産期女性では、リスクが低いことも分かった(同0.40、0.36〜0.44)。

 以上から、Hope氏らは「周産期女性における自傷リスクは極めて低く、とりわけ精神疾患を有する場合は顕著であった」と結論。「ただし、15〜19歳の若年層ではリスク上昇が見られたことから、該当する女性および家族を長期的に支援する体制を構築すべき」との見解を示している。

松浦庸夫