台湾・Chang Gung Memorial Hospital in LinkouのJia-Jin Chen氏らは、進行した慢性腎臓病(CKD)または末期腎臓病(ESKD)を併発する2型糖尿病患者2万7,279例を対象に、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の転帰改善効果を比較検討する後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、GLP-1受容体作動薬を使用した患者において全死亡率の低下が確認されたとJAMA Netw Open2022; 5: e221169)に発表した。

国民健康保険研究データベースを活用

 GLP-1受容体作動薬は、糖尿病患者における死亡率の低下および心血管予後の改善と関連する。一方、DPP-4阻害薬は進行したCKD患者によく使用される糖尿病薬である。しかし、糖尿病と進行したCKDまたはESKDを併発する患者において、どちらの糖尿病治療薬がより良い転帰と関連するかは明らかではない。

 そこでChen氏らは、このような患者集団を対象に、GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬の有効性を検証する後ろ向きコホート研究を行った。

 対象は、2012年1月1日~18年12月31日に台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)に登録された、ステージ5のCKDまたはESKDを有する2型糖尿病患者2万7,279例。GLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬の初投与から91日後を指標日とし、3カ月の曝露期間中における両薬の使用状況により、2万6,578例をDPP-4阻害薬群(男性54.34%、平均年齢65歳)、701例をGLP-1受容体作動薬群(同49.36%、59歳)に分類した。

 除外項目は、データが不完全、20歳未満、指標日から90日前の主要な脳心血管イベント(MACCE)、悪性新生物、指標日から90日前の腎臓移植または透析、死亡とした。両群間における共変量を調整するため傾向スコアによる重み付けを行い、2020年6月〜21年7月にデータを解析した。

 主要評価項目は、指標日以降の追跡期間中の全死亡率とした。副次主要項目は、敗血症または感染症関連死亡率およびMACCE関連死亡率とした。MACCEには、心筋梗塞、心原性ショック、心不全、冠動脈再灌流、冠動脈バイパス手術、血栓溶解療法、悪性不整脈、脳卒中が含まれた。

全死亡リスクはGLP-1作動薬がDPP-4阻害薬より21%低い

 解析の結果、追跡期間中央値はDPP-4阻害薬群で3.57年〔四分位範囲(IQR)1.95〜4.00年〕、GLP-1受容体作動薬群で1.76年(同1.03〜3.89年)であった。

 全死亡率は、DPP-4阻害薬群で100人・年当たり7.95(95%CI 7.76〜8.15)、GLP-1受容体作動薬群で100人・年当たり6.10(同4.76〜7.45)と、GLP-1受容体作動薬群で有意に低かった〔ハザード比(HR)0.79、95%CI 0.63〜0.98、P=0.03〕。

 敗血症または感染症関連の死亡率についても、DPP-4阻害薬群では100人・年当たり3.01(95%CI 2.88〜3.13)、GLP-1受容体作動薬群では100人・年当たり1.80(同1.07〜2.53)と、GLP-1受容体作動薬群で有意に低かった(HR 0.61、95%CI、0.40〜0.91、P=0.02)。

 MACCE関連死亡率はDPP-4阻害薬群と有意差がなかった(HR 1.07、95%CI 0.76〜1.51、P=0.69)

 脳血管障害の有無別でサブグループ解析を行ったところ、脳血管障害のない患者(HR 0.89、95%CI 0.71〜1.12)よりも脳血管障害のある患者(同0.33、同0.12〜0.86)において、DDP-4阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬による全死亡率の低下が示された(交互作用のP=0.04)。

 以上から、進行したCKDまたはESKDを併発する2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬による治療はDPP-4阻害薬による治療と比べて、全死亡率や敗血症および感染症関連死亡率の低下と関連していた。

 Chen氏らは、本研究が後ろ向き研究であり、血糖コントロールなどの臨床的要因や、喫煙や体重管理など転帰に影響を与える可能性がある他の要因に関する情報が不足していたことなどを限界として指摘。その上で、「GLP-1受容体作動薬治療の潜在的な有用性を確認するためには、より大規模な前向き研究が必要である」と述べている。

(今手麻衣)