浜松医科大学特命研究教授の緒方勤氏らは、マウスを用いた実験で子宮内低栄養が児に及ぼす影響を検討。その結果、子宮内低栄養にさらされた雄の仔マウスは、出生前には男性ホルモン分泌不全を、出生後には精子数の減少を来すことが明らかになったと、J Endocr Soc2022; 6: bvac022)に発表した。

妊娠6.5日目から栄養を50%減

 これまで、胎児発育不全症例の男児は高率に尿道下裂などの外性器異常を有し、将来的な不妊症リスクが高まること、胎児期の低栄養環境が成人期の糖尿病高血圧メタボリックシンドロームなどに関連すること〔DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)仮説〕が報告されている。しかし、胎児発育不全から精巣機能障害に至る機序や、精巣機能障害がDOHaDに含まれるか否かは不明だった。

 そこで緒方氏らは、妊娠中の母マウスに対して、妊娠6.5日目から栄養摂取量を50%に制限する実験を実施。栄養制限を受けた母マウスの仔(R-マウス)と通常食で飼育された母マウスの仔(C-マウス)を比較し、子宮内低栄養におかれた雄の仔マウスへの影響を検討した。

精巣内テストステロン濃度、精子数が有意に低下

 在胎17.5日(妊娠末期)の仔マウスを比較したところ、C-マウスに比べR-マウスではステロイドホルモン産生酵素遺伝子の発現量が有意に低下(P<0.01またはP<0.05)。関連する精巣内テストステロン濃度も有意に低下していた(P=0.00068)。

 生後6週の仔マウスの比較では、生殖細胞のアポトーシス亢進により、C-マウスに比べR-マウスでは精巣上体内の精子数が有意に減少していた(P=0.025)。

 以上を踏まえ、緒方氏らは「胎児発育不全から精巣機能障害や男性不妊症に至る機序が明らかになった。また、精巣機能障害がDOHaD仮説に含まれることが示された」と結論。「日本女性は痩せ願望が強く、子宮内低栄養の頻度が高い。環境因子に起因した児の精巣機能障害を予防するには、妊婦に向けた栄養状態の改善に関する啓発の推進が重要だ」との意向を示している。

(比企野綾子)