新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株は4つの系統(BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.3)に分類される。日本を含め世界の流行の主体はBA.1系統に属する株だが、デンマーク、インド、フィリピン、スウェーデンなど一部の国ではBA.2系統に属する株が主流となっており、日本でも置き換わりが警戒されている。日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して複数の抗ウイルス薬が承認されているが、BA.2に対する有効性は不明である。東京大学医科学研究所ウイルス感染部門特任教授の河岡義裕氏らはBA.2に対する抗体薬、抗ウイルス薬の効果を検討。中和活性、増殖抑制効果が維持されていたとN Engl J Med2022年3月9日オンライン版)に報告した。

bamlanivimab/etesevimabでは中和活性が著明に低下

 まず河岡氏らは、インドからの入国者より分離したBA.2を用いて、米食品医薬品局(FDA)が承認した抗体薬であるbamlanivimab/etesevimab(国内未承認)、カシリビマブ/イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)、tixagevimab/cilgavimab(国内開発中、AZD7442)、ソトロビマブ(商品名ゼビュディ)のBA.2に対する中和活性を検討。

 その結果、bamlanivimab/etesevimabでは中和活性が著明に低下し、中和に必要な抗体濃度は1万ng/mL以上であることが示された。

 カシリビマブ/イムデビマブについては、オミクロン株BA.1、BA.1.1に対する中和活性が著明に低下したことが同氏らの研究により示されているが(関連記事「オミクロン株への抗ウイルス薬の効果を確認」)、BA.2に対しては中和活性が維持されていた。tixagevimab/cilgavimabおよびソトロビマブも中和活性が維持されており、中和に必要な抗体濃度(±標準偏差)はそれぞれ222.59±64.47ng/mL、14.48±2.04ng/mL、1,359.05±269.23ng/mLだった。しかし、いずれも武漢株より効果は減弱しており、BA.2の中和に必要な抗体濃度は武漢株に比べて63.1倍、4.2倍、49.7倍だった。

 さらに同氏らは、BA.2に対する抗ウイルス薬レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルのウイルス増殖抑制濃度を検討。その結果、薬剤濃度(±標準偏差)はそれぞれ2.85±0.31μM、0.67±0.22μM、6.76±0.69μMで、BA.2の増殖抑制に必要な濃度は武漢株に比べて2.7倍、1.3倍、1.9倍だった。

 同氏らは、これらの抗ウイルス薬がBA.2の増殖を効果的に抑制するかについて、動物モデルを用いて引き続き検証するとともに、ヒトへの有効性は臨床試験での検討が必要であるとしている。

(安部重範)