脳主幹動脈閉塞(LVO)による急性虚血性脳卒中(AIS)に対する血管内治療(機械的血栓回収療法)は再灌流の成功率が高いものの、治療後90日以内の死亡率が約15%に上るとの報告もある。中国・Maoming People's HospitalのHao Li氏らは、同国の多施設共同ランダム化比較試験DIRECT-MTのデータを用いて検討した結果、治療後の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア高値、症候性頭蓋内出血(ICH)、病院到着時(入院時)のNIHSSスコア高値および血糖高値が、再灌流成功例における90日以内死亡の有意な独立予測因子であったとBMJ Open2022;12:e053765)に発表した。喫煙者で死亡リスクが低い"喫煙パラドックス"も認められた。

治療後の脳卒中スケール高値、症候性ICHで死亡リスク10倍以上

 DIRECT-MT試験は、脳前方循環LVOによるAIS患者を対象に、血管内治療単独がアルテプラーゼ静注と血管内治療の併用療法に対し非劣性かどうかを検証した試験。今回の解析対象はDIRECT-MT試験に登録された622例で、再灌流成功率は82.0%(510例)だった。90日死亡率は全体で18.5%(115例)で、死亡率は再灌流失敗群の33.0%(112例中37例)に比べ成功群で15.3%(510例中78例)と有意に低かった(P<0.001)。

 再灌流成功群のうち、90日以内死亡群(78例)では生存群(432例)に比べ、70歳以上(P=0.0057)、糖尿病の既往(P=0.0074)、入院時のNIHSSスコアが17以上(P<0.0001)、血管内治療後(24±6時間後)のNIHSSスコアが11以上(P<0.0001)、Alberta Stroke Program Early Computed Tomography Score(ASPECTS)が9未満(P=0.0208)、入院時の血糖値が130mg/dL以上(P<0.0001)、内頸動脈閉塞(P=0.0075)、新たな血栓形成(P=0.0217)、症候性ICH(P<0.0001)の割合が有意に高かった。逆に、喫煙者の割合は有意に低かった(P=0.0027)。

 多変量解析の結果、再灌流成功例における90日以内死亡の有意な独立予測因子として、血管内治療後NIHSSスコア11以上〔オッズ比(OR)12.04、95%CI 5.09~28.46、P<0.001〕、症候性ICH(同11.70、4.74~28.89、P<0.001)、入院時NIHSSスコア17以上(同3.14、1.77~5.55、P<0.001)、入院時血糖値130mg/dL以上(同2.54、1.51~4.27、P<0.001)が抽出された。

現喫煙者と過去の喫煙者区別せず、"喫煙パラドックス"が出現か

 これらの結果について、Li氏らは「入院時NIHSSスコアが高値のAIS患者では、再灌流に成功してもその時点で既に脳組織のかなりの部分に不可逆的損傷が生じているため、(NIHSSスコア高値が示す)重度の神経学的障害の回復は困難であることを示唆している」と考察し、「DIRECT-MT試験では、再灌流成功率が80%を超えているにもかかわらず、治療後90日時点で良好な機能的回復が認められた患者の割合は36.6%だった」と付言している。

 一方、今回の多変量解析では喫煙が90日以内死亡リスク低下の有意な独立予測因子であることも示された(OR 0.38、95%CI 0.17~0.83、P=0.015)。この結果について、同氏らは「これまでの血管内治療に関する研究でも、喫煙者で死亡リスクが低い、すなわち喫煙者の方が予後良好であるという"喫煙パラドックス"と呼ばれる現象が報告されている。しかし、今回の研究では、現喫煙者と過去の喫煙者を区別せず、喫煙量のデータも収集しなかったため、これらが結果に影響した可能性がある」と指摘し、「喫煙と死亡との関連については、さらなる研究を行って確認する必要がある」と述べている。

(太田敦子)