今年、30年目を迎えたJリーグはJ1~J3まで58クラブに拡大した。40都道府県に広がる各クラブは、地域性もあって多種多様。古橋亨梧(セルティック)のようにJ2(岐阜)でプロデビューし、日本代表まで上り詰める選手も出てきた。
 「ある時突然、選手が化けるサッカーでは、多くの選手に真剣勝負の場があることはすごく大事。58クラブはそれぞれの土地柄、文化がある。例えば、雪に閉ざされ耐えて短い夏を迎える秋田は、一気呵成(かせい)に攻める。だから、耐え忍ぶ選手や、ここぞという集中力のある選手を育てるとかね。58通りの人材育成論があれば、ものすごく多様性のある選手を育てられるし、Jリーグだからこそできること」
 この2年は新型コロナウイルスの対応に追われた。2020年2月25日に、いち早く公式戦の延期を決断するなど、スポーツ界を先導したが、前職の香港勤務時代に重症急性呼吸器症候群(SARS)の混乱を聞いていた経験も生きた。
 「国内感染者がまだ4例だった(2020年)1月27日に、僕は全幹部に無観客試合と中止の判断基準をシミュレーションするように号令をかけていた。専門家が『瀬戸際』という言葉を使い、相当まずいなと(思って延期を決めた)。リーグ戦中止よりも、誰も再開しない中で再開することの方が難しいとも思っていた」
 後任にはJ1札幌で社長などを務めた野々村芳和氏(49)が、元Jリーガーとして初のチェアマンに就く。
 「経験と実績は申し分ない。身をもって選手の立場、クラブ経営も知っているし、言葉の力、発信力をすごく持っている。Jリーグ理事も務め、リーグの勘所や至らないところを分かっている。後任としてベストチョイスではないか」
 無類のサッカー好きで、退任後はサポーターに戻れることを楽しみにしている。キャンピングカーを購入し、全国行脚を計画している。
 「もう一回、(ゴール裏で見ていた)あの頃に戻るよ。こっちから見ているサッカーと別の風景が見られるんじゃないかな。楽しみ」。
 ◇村井満氏の略歴
 村井 満氏(むらい・みつる)リクルート(現リクルートホールディングス)元執行役員。Jリーグ理事を経て、14年1月に第5代チェアマンに就任。埼玉・浦和高時代はサッカー部に所属し、ポジションはGK。チェアマン就任前はJ1浦和のサポーターで、海外の日本代表戦にも駆け付ける熱狂的ファンだった。早大出。埼玉県川越市出身。62歳。 (C)時事通信社