新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株が主体の流行第六波の感染減少ペースが鈍化する中、国際医療福祉大学公衆衛生学教授の和田耕治氏は3月11日、モデルナ・ジャパンが主催したオンライン・メディアセミナーで「第7波を見据えたワクチン戦略」と題して講演。「現在SARS-CoV-2感染者数は底の状態にあり、4~5月にかけて再び増えることが予想される」と警鐘を鳴らした上で、「1日も早く3回目のSARS-CoV-2ワクチンを接種する必要がある」と強調。また中長期的展望として「次に到来する第七波は、第六波より感染者数の波が高くなる可能性がある。新たな変異株を想定した危機管理が求められ、今年(2022年)の冬前には4回目のワクチン接種が必要になるだろう」との見通しを示した。

ワクチンの3回目接種率に遅れ、1日も早い接種を

 国内における現時点でのSARS-CoV-2の流行状況は、新規感染者数の減少が続くなどピークは過ぎたと考えられている一方で、感染力がより強いとされるオミクロン株のBA.2系統への置き換えが進むなど、今後感染が再拡大する可能性が指摘されている。

 感染者数が下がり切らないまま第七波に突入する懸念を示す声が挙がる中、和田氏は「今後、感染者数は増えるだろう」との予測を示した。その理由として、3月後半に卒業式、花見といった行楽などのイベントを機に人の移動が増え、接触機会も増加することや、BA.2への置き換えが進むことが挙げられるという。

 死亡者数の増加を抑えるためは感染者数をいかに抑えられるかが重要となり、感染対策の鍵を握るのはSARS-CoV-2ワクチンの接種率の向上である。だが、国内におけるワクチンの追加接種率は3月13日時点で30%と低水準にとどまっている。

 こうした状況を踏まえ、同氏はSARS-CoV-2感染拡大抑制策として「高齢者や基礎疾患を有する成人へのSARS-CoV-2ワクチンの迅速な3回目接種が課題になる」と力説。3回目接種の遅れを招いている理由について、私見としながら「3回目接種の効果と意義が国民に十分に伝わっていない。遅くとも高齢者は3月末までに完了させるといったタイムラインが設定されていない」などを指摘した。海外でも、香港や韓国などのアジア地域で感染の再拡大が見られており、「今春にかけて流行が継続し、感染例が増える可能性がある」と警鐘を鳴らした。

再び感染増加に転じる恐れ、他疾患合併のコロナ患者への対応急務に

 SARS-CoV-2感染拡大抑制の有力な手段として期待されるワクチンだが、mRNAワクチン接種による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防効果は高く、海外からはオミクロン株に対しても3回目接種後の入院および死亡の予防効果(接種0~3カ月後)はそれぞれ80~98%、85~99%に上ったとの報告がある。

 和田氏は、沖縄県でオミクロン株拡大期の今年1月1日~2月28日にCOVID-19と診断された5万例を対象に、ワクチン3回目接種の効果(入院率)を年齢階級別に解析した結果を紹介()。入院率は40~59歳で1.9%、60~79歳で4.9%、80歳以上は28.2%と、2回目接種(それぞれ2.4%、10.7%、39.9%)に比べ低下しており、有効性の高さを評価した。

図. SARS-CoV-2ワクチン接種回数別に見た年齢階級別の入院率

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(セミナー配布資料を基に編集部作成)

 また、広島県のCOVID-19患者を対象とした調査では、COVID-19発症前のワクチン2回接種例は非接種例に比べ、後遺症(Long COVID)の割合が有意に低下し、感染後に後遺症が出現した場合にも半年以内に改善した割合が増加したと報告。同氏は「ワクチン接種による後遺症の予防効果も徐々に示されている」と述べた。

 日本全体で見ると、早い時期にSARS-CoV-2感染者数が再び増加に転じる恐れがあるとされる中、同氏は「東京において第七波で新規患者が3万人発生した場合、医療提供を継続するための体制構築・整備が必要となる。医療逼迫は少し落ち着くかもしれないが、次の感染の波が到来した際に問題になるのは、骨折、虫垂炎などのコロナ以外の疾患、また出産を控える妊婦などが感染した例、すなわち他疾患を合併したCOVID-19患者にどう対応するかだ。院内感染予防などの観点からも対策が急務となる」と危機感を示した。

 また、今冬までに4回目のSARS-CoV-2ワクチン接種が必要になるとの見方も提示。「全国民に接種すべきか否かという議論があるが、高齢者や基礎疾患を有する人で接種を希望する人には対応可能な体制が求められる。新たな変異株を想定した危機管理も必要だ」と述べた。

2価ワクチン、開発の意向を表明

 セミナーでは、モデルナ・ジャパン社長の鈴木蘭美氏が講演。SARS-CoV-2に対する2価追加接種ワクチンの開発を加速させ、4回目接種を想定し、今秋から冬にかけての実用化を目指すと表明した。同氏は「今後発生が想定される変異株に対しても、先手を打ってワクチンを開発しなければいけない。全世界的にオミクロン株だけでなく、さらなる変異株にも対応できるようなワクチン開発が必要と考えている」と強調した。

 同社が開発を急ぐ2価ワクチンは、既承認のコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(国内商品名スパイクバックス筋注)と開発中のオミクロン株用ワクチンを含有した製剤。同氏は「今年秋ごろに予想される4回目接種は、変異の多様性を反映し、9月~来年2月の予防効果を高めるため、6カ月以上の中和抗体価持続を目指す必要がある」と付言した。

(小沼紀子)