国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター母性内科診療部長の山口晃史氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の受け入れ施設で働く感染リスクが高い医療従事者を対象に、易感染性や重症化要因を検討する前向き研究を実施。その結果、男女とも約9割がビタミンD欠乏症であることが明らかになったと、BMJ Nutr Prev Health2022; e000364)のLetterで発表した。

対象は医療職の男性87人、女性274人

 日本人を含むアジア人のビタミンD不足は、COVID-19流行前から指摘されていた。しかし、COVID-19流行中に医療従事者のビタミンDを評価した報告はほとんどない。

 COVID-19の病状は、ウイルス側の変化だけでなく、ホスト側の年齢や基礎疾患などにより多様に変化する。山口氏らはこの点に着目し、ホスト側の易感染性や重症化要因を検討する目的で、COVID-19患者を受け入れている国立成育医療研究センターに勤務する医療従事者361人〔男性87人、年齢中央値39歳(範囲25~60歳)、女性274人、同33歳(22~67歳)〕を対象に前向き観察研究を実施した。1都3県に第2回緊急事態宣言が発令されていた2021年3月1~5日に採血を行い、感染防御能、栄養状態、動脈硬化、耐糖能、肝・腎機能、骨髄機能を評価した。

女性で重度ビタミンD欠乏症が有意に多い

 検討の結果、男性の89.7%(78人)、女性の92.7%(254人)は、血清25-水酸化ビタミンD〔25(OH)D〕濃度が20ng/mL未満と低く、ビタミンD欠乏症を呈していた。また、男性の25.3%(22人)、女性の48.2%(132人)は、25(OH)D濃度が10 ng/mL未満と重度のビタミンD欠乏症であった。重度ビタミンD欠乏症の割合は、男性に比べ女性で有意に多かった(P=0.001、Fisher's exact検定)。一方、年齢と血清25(OH)D濃度の間に強い相関は認められなかった〔Pearsonの相関係数0.094、P=0.074〕。

 血清亜鉛濃度の中央値は、男性で90μg/dL、女性で88μg/dL。男性の17.2%(15人)、女性の27.7%(76人)が基準値(80~130μg/dL)に満たなかった。

 ナチュラルキラー(NK)細胞活性にはばらつきが見られ、男性の42.5%(37人)、女性の58.4%(76人)が基準値の下限である18%を下回っていた。しかし、NK細胞活性と血清ビタミンD濃度の間に強い相関は認められなかった(Spearmanの順位相関係数-0.047、P=0.374)。

長期間の屋内活動が影響か

 その他の項目(総蛋白、アルブミン、鉄、HbA1c、白血球数、血小板、総コレステロール、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、尿素窒素、クレアチニン、尿酸)は、ほぼ正常範囲内だった。

 以上を踏まえ、山口氏らは「COVID-19診療に当たる医療従事者では、男女ともに約90%がビタミンD欠乏症に陥っていた。その一因として、緊急事態宣言下で感染予防対策を遵守した勤務や日常生活により、屋内活動が長期に及んだことが挙げられる」と考察。「細胞の分化・増殖や免疫機構、骨代謝に深く関わるビタミンDが不足すると、感染防御能の低下に加え、骨代謝の低下および運動不足による骨粗鬆症、それに伴う骨折が懸念される。医療従事者に限らず屋内で過ごす時間が長い人は、適度な紫外線曝露や食事、サプリメント、薬剤によるビタミンDの補充が有用だろう」と付言している。

(比企野綾子)