中国・Third Military Medical UniversityのYu-Hui Liu氏らは、同国・武漢市の3施設において新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により入院治療を受けた60歳以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたコホート研究において、退院後1年間の認知機能の経時的変化を検討。高齢でのSARS-CoV-2感染、特に重症感染が長期的な認知機能低下リスクの増加と関連していることを、JAMA Neurology2022年3月8日オンライン版)に報告した。

COVID-19の1,438例と配偶者438例を比較

 重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)患者の2割弱で長期的な認知機能障害が報告されている。COVID-19患者では、SARS-CoV-2感染後6カ月以内に認知症と診断されるリスクが高まることが報告されているが、長期的な認知機能への影響は分かっていない。

 同研究の対象は2020年2月10日〜4月10日に武漢市のCOVID-19指定病院3施設でCOVID-19の治療を受けて退院した60歳以上の1,438例(男性691例、女性747例、年齢中央値69歳)。米国胸部学会ガイドラインに準じてCOVID-19重症群(260例)、非重症群(1,178例)に分け、非感染の配偶者438例(男性222例、女性216例、年齢中央値67歳)を対照として認知機能の経時的変化を比較検討した。

 主要評価項目は12カ月後の認知機能で、退院後6カ月(フォローアップ前半)はInformant Questionnaire for Cognitive Decline in the Elderly(IQCODE)を用いて家族から情報を取得し、退院後6〜12カ月(フォローアップ後半)は電話インタビューによる認知機能検査Telephone Interview of Cognitive Status(TICS)-40を使用した。全追跡期間中に認知機能が安定していた場合を「認知機能安定」、前半で低下したが後半は安定した場合を「早期発症型の認知機能低下」、前半は安定していたが後半で低下した場合を「遅発発症型の認知機能低下」、全追跡期間中に低下していた場合を「進行型の認知機能低下」と定義した。

退院後1年間に重症例の4割以上が認知機能低下

 退院後12カ月に認知機能障害は12.45%に発生した。特に重症群では、認知症および軽度認知障害の割合がそれぞれ15.00%、26.15%で、非重症群(0.76%、5.35%)、対照群(0.68%、5.02%)と比べいずれも有意に多かった(全てP<0.001)。一方、非重症群と対照群に有意差はなかった。

 認知機能変化の4カテゴリーを調べると、重症群では非重症群、対照群に比べ、早期発症型の認知機能低下、遅発発症型の認知機能低下、さらに進行型の認知機能低下の発生率がいずれも有意に高く(全てP<0.001)、特に進行型の認知機能低下は21.15%に認められた。

 ロジスティック回帰モデルで認知機能低下リスクに関連する要因として年齢、性、教育レベル、BMI、併存疾患を調整すると、重症例は早期発症型の認知機能低下〔調整後オッズ比(aOR)4.87、95%CI 3.30〜7.20〕、遅発発症型の認知機能低下(同7.58、3.58〜16.03)、進行型の認知機能低下(同19.00、9.14〜39.51)のリスク増加と有意に関連していた(P<0.001)。一方、非重症例は早期発症型の認知機能低下(aOR 1.71、95%CI 1.30〜2.27)のリスク増加に関連していた。

 これは、認知機能障害の危険因子としてよく知られている年齢や併存疾患といった交絡因子以上に、SARS-CoV-2感染が長期的な認知機能低下のリスクと関連している可能性があることを示唆していた。

 Liu氏らは、高齢者のSARS-CoV-2感染、特に重症感染例は長期的な認知機能低下のリスク増加と関連していたという結果を受け、「この課題への早急な対策が重要だ」と強調している。

(宇佐美陽子)