重度精神疾患(SMI)患者では、若年時から心血管疾患(CVD)リスクが上昇することが明らかになった。米・Health Partners InstituteのRebecca C. Rossom氏らは同国のプライマリケア外来に通院している患者約60万例を対象に、長期にわたるSMIとCVDリスクの関係を検討した結果をJ Am Heart Assoc2022; 11: e021444)に発表。「SMI患者では若年時からCVD危険因子を明らかにし、介入することが重要である」と指摘した。

18~75歳の患者が対象

 これまでの研究でSMI患者は同年の一般人と比べ10~20年早く死亡し、その主な死因は心疾患であることが報告されている。SMI患者のCVDリスクを検討したこれまでの研究では、外来通院患者に比べ精神疾患がより重度で虚弱な入院患者のみを対象としていた。そこでRossom氏らは今回、同国の外来通院患者を対象に長期にわたるSMIとCVDリスクの関係を検討する初めての大規模研究を行った。

 2016年1月~18年9月にミネソタ州とウィスコンシン州のプライマリケアに通院していた18~75歳の患者を対象に、その後の10年間および30年間(生涯)に心筋梗塞、脳卒中、心血管死が生じるCVDリスクを予測した。40~75歳でCVDがない患者では動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクスコアを用いて10年間のCVDリスクを、18~59歳でCVDがない患者ではフラミンガムリスクスコアを用いて30年間のCVDリスクを予測。CVD危険因子に基づき①危険因子が至適範囲内:血圧120/80mmHg以下、総コレステロール値180mg/dL未満、非喫煙、非糖尿病、②複数の危険因子が至適範囲以上:収縮期血圧(SBP)120~139mmHg、拡張期血圧(DBP)80~89mmHg 、総コレステロール値180~199mg/dL、非喫煙、非糖尿病、③複数の危険因子の数値が上昇:総コレステロール値200~239 mg/dL、SBP 140~159mmHg、DBP 90~99mmHg 、非喫煙、非糖尿病、④1つの重大な危険因子を有する:総コレステロール値240mg/dL以上/SBP 160mmHg以上/DBP 100mmHg 以上/喫煙/糖尿病、⑤複数の重大な危険因子を有する―の5群に分類した。

 解析対象は、SMI患者1万1,333例、非SMI患者57万9,924例、計59万1,257 例。SMIの内訳は、双極性障害8,004例(70.6%)、統合失調感情障害2,000例(17.6%)、統合失調症1,329例(11.7%)。SMI患者は非SMI患者に比べ女性、若年、黒人、アメリカ/アラスカネイティブ/多人種、メディケイド/メディケアの加入者が多かった。

SMIで10年間および30年間のCVDリスク上昇

 未調整の解析で10年間のASCVDリスクに、SMI患者と非SMI患者で有意差はなかった(ASCVDリスクスコア8.0 vs. 7.9、P=0.58)。

 非SMI患者に比べSMI患者ではCVD(3.7% vs. 4.6%、P<0.0001)、冠動脈疾患(2.6% vs. 3.0% 、P=0.015)、高血圧(13.2% vs. 14.9%、P<0.0001)の有病率が高く、糖尿病は約2倍(6.5% vs. 13.7%、P<0.0001)で、BMI30以上の割合が高く(35.6% vs. 49.7%、P<0.0001)、BMI40以上の割合は約2倍(6.5% vs. 12.5%)だった。

 性、年齢、人種、民族、保険の種類を調整して解析した結果、40~75歳では10年間のASCVDリスクが非SMI患者に比べSMI患者で有意に高かった〔平均ASCVDリスクスコア7.92(95%CI 7.90~7.95)vs.8.31(同8.15~8.46)、P<0.0001〕。

 同様の調整後の解析で、18~59歳では30年間のCVDリスクに関して最もリスクが高い複数の重大な危険因子を有する群に分類された割合が非SMI患者に比べSMI患者で有意に多く(10.8% vs. 18.8% 、P<0.0001)、SMI患者のCVDリスクは有意に高かった〔オッズ比(OR)1.92、95%CI 1.82~2.01、P<0.0001〕。

30年CVDリスク予測を奨励

 SMIの疾患別に見ると、統合失調感情障害および統合失調症に比べ、双極性障害は若年で、女性、白人が多かった。

 未調整の10年間のASCVDリスクは統合失調症で最も高く(平均ASCVDリスクスコア10.1)、次いで統合失調感情障害(同8.5)で、双極性障害で最も低かった(同7.4)。

 性、年齢、人種、民族、保険の種類を調整後、10年間のASCVDリスクは、他の2疾患に比べ双極性障害で有意に高かった〔平均ASCVDリスクスコア8.24 vs.統合失調感情障害7.76(P<0.05)、vs.統合失調症7.22 (P<0.05)〕。

 同様の調整後、18~59歳のSMI患者では30年間のCVDリスクに関して複数の重大な危険因子を有する群に分類された割合は、統合失調感情障害が非SMIの約3倍(27.5%、95%CI 25.3~29.8%)、双極性障害が約2倍(24.6%、同23.4~25.9%)、統合失調症が約2倍(20.8%、同18.5~23.4%)で、統合失調感情障害のCVDリスクは他の2疾患に比べ有意に高かった。

 どの因子がCVDリスクの群間差に最も寄与するか検討したところ、SMI患者の10年間のCVDリスクは年齢を調整したときに最も大きくなり(平均9.30、95%CI 9.13~9.48)、保険の種類で調整したときに最も小さくなった(同6.11、5.9~6.3)。

 年齢がCVDリスクに及ぼす影響をさらに検討するため、年齢層別に非SMIとSMIのリスクを比較した。その結果、非SMIに比べSMIの10年間のCVDリスクは40歳代、50歳代で上昇したが、60歳代、70歳代では低下した。また、非SMIに比べSMIの30年間のCVDリスクは10~20歳代、30歳代、40歳代で上昇したが、50歳代では低下した。

 以上から、Rossom氏は「若年でもSMI患者は非SMI患者に比べてCVDリスクが高かった。SMI患者ではできる限り早期にCVD危険因子を明らかにし、なるべく年齢が若いうちにこれらの因子に介入することが最大の利益につながる」と述べた。さらに「現在は10年CVDリスク予測がよく使われているが、これは40歳になるまで使えない。SMI患者の場合、40歳で10年CVDリスクを予測しても遅過ぎることから、医療制度や臨床医はSMI患者には18歳から使用できる30年CVDリスク予測を用いることを勧めている」と付言した。

(大江 円)