妊産婦と子どもの健康に関する記録を1冊で管理できる母子手帳は、前身の「妊産婦手帳」が生まれてから今年で80年。その内容と表現は時代とともに変化し、近年はジェンダーや差別への配慮が広がる。母親が出産・育児と仕事を両立しやすくするため、父親に育児参加を促す役割も担うようになった。
 「泣き虫などは家族の扱い方が悪かったためによく起こる」。1950年代の母子手帳には、こんな珍説が記載されていた。戦後間もないころには手帳の普及を目的とした映画が上映され、母乳を「赤ちゃんにとってこれ以上ない幸せ」と礼賛する場面もあった。
 ジェンダー平等が叫ばれる今は、赤ちゃんの性別を意識させない表現が定着している。イラストを中性的にするのは、もはや一般的だ。
 社会の変化に合わせて名称も変わる。岡山市は2002年、全国に先駆けて「親子手帳」に改称した。出産・育児の負担を父母が分担するよう促すのが狙いで、父親の役割や休暇申請の手順、ストレスチェックのページも加えられた。
 妊娠中や出産から間もない時期も働く女性が増え、02年からは医師が勤め先に留意すべきことを伝える「連絡カード」が全国ほとんどの母子手帳に収められた。カードが提出された場合、事業者は医師の指示に従って作業を制限することなどが義務付けられている。
 カードの普及に尽力する長井聡里医師は「産休前の従業員の健康管理が企業にも求められることが浸透してきた」と、社会の変化を感じている。同時に「中小企業ではまだ不十分なところも多い」と課題も口にした。
 今年はおおむね10年ごとに母子手帳の記載内容を見直す国の検討会が開催される予定。子育ての「常識」が変化したのに応じ、時代に合った手帳へとさらに姿を変えられるか―。 (C)時事通信社