新型コロナウイルス禍の東京都内の2年間を追った写真家初沢亜利さん(48)が、写真集「東京二〇二〇、二〇二一。」(徳間書店)で、優れた写真家に贈られる「第30回林忠彦賞」を受賞した。多くの人が家にこもる中、あえて外に出て撮影して見えた光景は、コロナに翻弄(ほんろう)されながらも日常が続く東京の姿だった。
 初沢さんは「2年間右往左往した東京の自画像となった。10~20年後の記録になれば」と話している。
 同賞は、戦後を代表する写真家林忠彦氏(故人)の業績を記念して創設された。受賞作は人通りの途絶えた桜並木や使用禁止となった遊具、無観客開催となった五輪期間中の都内の様子など168点を収めた。
 都内育ちの初沢さんはこれまで、北朝鮮や基地問題に揺れる沖縄、東日本大震災の被災地などを撮影。その中で「政治などの権力が集中する東京を撮らなければと思うようになった」と話す。2020年に開催予定だった五輪に向けて撮影を始めるとコロナ禍に見舞われた。
 「立ち入り禁止」と書かれたテープが貼られたシーソーで遊ぶ子どもや、コンビニの床に足形のシールを貼り付けている外国人店員。初沢さんの作品には、コロナによる街の変化と、厄災があっても変わらない人々の営みが捉えられている。初沢さんは「海外とは違い市民の自主性に任せた東京のコロナ禍は、独特な人の流れになると思った。こぼれ落ちてくる日常が見えた」と振り返る。
 撮影の合間、写真をフェイスブックに投稿すると「自粛して」と批判されることもあったが、外出に葛藤はなかったという。「即時性よりも数年後や10年後にどう見られるかを意識して撮影していた」と話す。
 受賞を記念した写真展は5~6月、都内と山口県周南市で開かれる予定。 (C)時事通信社