口腔機能の衰えとフレイルとの関連が指摘される中、岡山大学大学院予防歯科学分野講師の竹内倫子氏らは、60歳以上の歯科受診患者を対象に解析を実施。その結果、舌の動きが衰えていた患者では2年後にフレイルになるリスクが高かったと、Int J Environ Res Public Health2022; 19: 1145)に報告した。

自立歩行可能な60歳以上の97例を追跡

 日常生活動作が自立した状態と要介護状態の中間に位置するフレイル。要因として、加齢に伴う活動量の低下、社会的交流機会の減少、身体機能や筋力、認知機能の低下、低栄養などさまざまな指摘がされている。放置すると要介護リスクが高まる。竹内氏らは、口腔環境との関連に着目し、歯科受診患者を対象に前向きコホート研究を実施した。

 対象は、同大学病院予防歯科部門を2017年11月〜21年1月に受診した60歳以上の患者97例。質問内容が理解でき、自立歩行が可能で定期的に受診していることなどを組み入れ条件とした。主な背景は平均年齢71.9歳、男性34例、平均残存歯数20.8本、平均機能歯数26.4本。

 2年にわたり追跡し舌背部の細菌数、口腔内湿度、舌圧、咬合力、咀嚼能力、オーラルディアドコキネシス(ODK)などを評価した。舌と唇の運動を評価するODKは、「パ(唇の運動機能)」「タ(舌の前方の運動機能)」「カ(舌の後方の運動機能)」をそれぞれ5秒間発音してもらい、1秒当たりの平均回数を測定し評価した。2年後に、国立長寿医療研究センターの日本語版フレイル基準によりフレイルを判定した。

連続した「タ」の発音回数が少ないとフレイルに

 2年後にフレイルと判定された患者は97例中34例だった。健康な患者を対照群(63例)としフレイル群と比較したところ、ODKの「タ」の1秒当たりの平均回数は対照群の6.3回に対し、フレイル群では5.8回、同様に「カ」は5.9回に対し5.5回と、いずれも有意に少なかった(順にP=0.027、P=0.032)。「パ」には両群で有意差はなかった。

 さらに、ロジスティック回帰モデルを用いて、口腔環境とフレイルとの関連を検討した。その結果、ODKの「タ」の平均回数とフレイルとの有意な関連が示された(オッズ比1.02、95%CI 1.02〜3.35、P=0.044)。

 以上から、竹内氏らは「60歳以上では、ODKの『タ』の平均回数が少ないことが2年後のフレイルの予測因子になる可能性が示された」と結論。「詳細メカニズムは未解明だが、コミュニケーション障害や栄養不足によりフレイルに至る可能性がある。舌の動かし方を訓練することで舌の運動機能は維持・改善できるとされるため、フレイル予防につながるだろう」との見解を示している。

松浦庸夫