【ワシントン時事】ロシアのウクライナ侵攻は、新型コロナウイルス禍から立ち直りつつある世界経済をくじく大きな打撃になりかねない。資源大国ロシアへの制裁でエネルギー供給が減少するとの懸念から、原油先物相場は一時13年8カ月ぶりの高値を付け、高インフレに一段と拍車が掛かる公算が大きくなった。有数の小麦輸出国でもあるロシアとウクライナからの輸入に依存するアフリカや中東地域では、食料不足による社会不安の拡大も懸念される。
 ◇警戒感あらわ
 「既に物価は高過ぎるのに、インフレ圧力がさらに増す」。米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は21日の講演で、原油価格などの急激な高騰に警戒感をあらわにした。インフレ率は米国で40年ぶりの高水準に到達。ユーロ圏でも過去最高を更新している。
 ロシアは石油・ガスに加え、自動車の排ガス触媒に使われるパラジウムの一大生産国でもある。ウクライナは世界の半導体製造用ガス「ネオン」供給の7割を担うが、今後の行方は不透明だ。パウエル氏は「これほど幅広い(資源)市場の混乱は最近なかった」と指摘した。
 物価上昇が米欧などに比べて鈍かった日本にもインフレは忍び寄る。ニッセイ基礎研究所は、4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)上昇率が前年同月比2%に達すると予想する。
 岸田文雄首相は「国民への経済的打撃をできる限り小さくするため、ありとあらゆる政策を思い切って講じる」と強調。与党内からは、ガソリン税の一時的引き下げを含めた追加の経済対策を求める声が強まっている。
 ◇途上国にしわ寄せ
 「ウクライナの戦争でアフリカが飢える」。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は18日、小麦不足で途上国にしわ寄せが行くことに焦りの色を濃くした。
 IMFによると、アフリカのサハラ砂漠以南を指す「サブサハラ」地域で消費される小麦は、9割弱が輸入頼み。その3分の1はロシア産とウクライナ産だ。春の農繁期が戦争で台無しになれば、世界の食料安全保障にとって深刻な事態を迎える。
 アフリカ中部の大国コンゴ(旧ザイール)のカザディ財務相はIMFの会合で「石油とパンの値上がりは、国家・財政の大きな不安定要素だ」と悲鳴を上げた。
 国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は「破滅を防ぐ戦略的で効果的な対策を講じなければ、貧しく不安定な地域で大量の移民が発生する可能性もある」と警鐘を鳴らしている。 (C)時事通信社