変異株AdobeStock_418327305.jpeg

© Adobe Stock ※画像はイメージです

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)は、B.1.617.2系統(デルタ株)に比べて感染力は強いが重症化率が低く、ワクチンによる保護効果が低いことが国内外から報告されている。しかし、年代別の入院・死亡リスクなどの詳細な解析は不十分であった。英・University of CambridgeのTommy Nyberg氏らは、同国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者150万例超においてオミクロン株の受診、入院、死亡リスクをデルタ株と比較。オミクロン株は重症化リスクが低く、年代により差があることなどをLancet2022年3月16日オンライン版)に報告した(関連記事「オミクロン感染者では入院・死亡が低率」)。

比例ハザード回帰モデルを用いて年齢やワクチンにより層別

 英国では高齢者のワクチン接種率が高く、70歳以上の90%超が3回目接種(追加接種)を受けている。オミクロン株のリスクに関する既報では、こうした接種率の高さが交絡となっている可能性があった。

 Nyberg氏らは、2021年11月29日〜22年1月9日に英国在住のCOVID-19症例413万5,347例のうち、デルタ株またはオミクロン株感染が確認でき、解析基準に合致した151万6,702例(37%)の個人データとワクチン接種、受診、入院、死亡に関するデータを照合。比例ハザード回帰モデルを用いて、確定診断日(陽性確定に係る検体採取日)から14日以内の受診および入院、確定診断後28日以内の死亡の相対リスクを検討した。解析では、検体採取日、年齢(10歳ごと)、民族、居住地、ワクチン情報による層別化を行い、さらに性、貧困指数、過去のSARS-CoV-2感染歴、年齢(1歳ごと)による調整を行った。

 二次解析では、オミクロン株に対するワクチンの種類別の有効性を検討。さらに、観察されている重症化リスクの低さが同株固有の特徴なのか否かをデルタ株との比較で検討した。

 151万6,702例中、オミクロン株感染は106万7,859例で、うち再感染が10万2,957例(9.6%)、デルタ株感染は44万8,843例で、うち再感染が5,983例(1.3%)だった。

入院リスクは約6割、死亡リスクは約7割低率

 デルタ株感染に対するオミクロン株感染によるリスクの調整ハザード比(aHR)は、受診・入院の複合では0.56(95%CI 0.54~0.58)、入院のみ(当日死亡を含む)は0.41(同0.39~0.43)、死亡は0.31(同0.26~0.37)と、いずれもリクスが低かった。

 オミクロン株による受診、入院、死亡リスクは、いずれも年齢の影響を強く受けた。例えば、入院のaHRは10歳未満では1.10(95%CI 0.85~1.42)とデルタ株と同等だが、60~69歳群では0.25(同0.21~0.30)と大きく低下し、70歳以上も半減した(80歳以上:0.47、同0.40~0.56)。

 過去のSARS-CoV-2感染歴はワクチン接種の有無を問わず死亡率の低下と関連しており、死亡のaHRはワクチン接種群で0.47(95%CI 0.32~0.68)、非接種群で0.18(同0.06~0.57)だった。一方、入院に関してはワクチン非接種群でのみ中等度のリスク低下が認められた(aHR 0.55、95%CI 0.48~0.63)。

重症化しにくいのはオミ株固有の特徴

 ワクチン非接種群において、デルタ株に対するオミクロン株の入院aHRは0.30(95%CI 0.28~0.32)で、一次解析のどの集団よりも低かった。この知見は、オミクロン株固有の重症化リスクはかなり低いものの、同株に対するワクチンの有効性が低いことにより、ある程度相殺されていることを示している。

 mRNAワクチンの追加接種は、オミクロン株感染による受診・入院、死亡リスクを低下させた。未追加の場合に対する追加接種後8~11週の入院HRは0.22(95%CI 0.20~0.24)で、追加接種のベネフィットは1、2回目の接種ワクチンにかかわらず関係なく得られた。

 Nyberg氏らは「オミクロン株感染後の重症化リスクは、デルタ株の場合と比べて実質的に低く、重篤な転帰はさらに減少すること、リスクには年齢により有意差が認められることが分かった。mRNAワクチンの追加接種により、オミクロン株へのブレークスルー感染に伴う入院・死亡の予防効果を7割超に維持できる」と結論している。なお、研究対象にBA.2系統のオミクロン株の症例は含まれていない。

(小路浩史)