過体重は結腸直腸がん(CRC)の確立された危険因子だが、従来の研究の大部分はある時点の過体重とCRCリスクの関連を検討するのみで、生涯の累積喫煙量を示すpack-yearsのような、過体重での累積生存年数は考慮されていない。ドイツ・German Cancer Research Center/Heidelberg UniversityのXiangwei Li氏らは、同国の住民約1万例を対象にした症例対照研究で「年齢とBMIにより重み付けされた過体重(日本の診断基準では肥満)または肥満の状態での生存年数(weighted number of years lived with overweight or obesity;WYOs)」という尺度を用いて検討した結果、WYOsはある一時期における過体重よりもCRCリスク上昇との関連が強かったとJAMA Oncol2022年3月17日オンライン版)に発表した。

過体重での累積生存年数の尺度WYOsで検討

 解析対象は、2003年からドイツの住民を対象に行われている症例対照研究DACHS studyに登録されたCRC患者群5,635例(平均年齢68.4歳、男性59.7%)およびCRCの既往歴がない対照群4,515例(同68.5歳、61.1%)。20歳以降10歳ごとの各年齢におけるBMI-25の値を超過BMI(eBMI、BMI 25未満の場合は0)と定義し、20歳からCRC診断時(CRC群)または研究登録時(対照群)までの累積値(year×eBMI)をWYOsとして算出した。

 両群とも、平均BMIは加齢とともに上昇した。しかし、CRC群は対照群と比べてどの年齢でもBMIおよび過体重・肥満の割合が有意に高く、例えば50歳時のBMIは26.6 vs. 25.8、過体重・肥満の割合はそれぞれ45.7% vs. 43.3%、17.1% vs. 11.4%だった。

肥満の持続はより重要な危険因子の可能性

 ロジスティック回帰モデルによる解析の結果、WYOsが1標準偏差(SD)増加するごとにCRCリスクは有意に上昇することが示された〔調整後オッズ比(aOR)1.55、95%CI 1.46~1.64〕。一方、eBMIの1SD増加によるCRCリスクのaORは年齢により1.04(95%CI 0.93~1.16)から1.27(同1.16~1.39)まで幅があり、いずれもWYOsの1SD増加によるaORより低かった。

 また、WYOsとCRCリスクの間には用量反応関係が認められ、20歳以降の全年齢で正常体重を維持していた対照群(WYOs=0)に対するCRCリスクのaORは、WYOsの第1四分位群(同0.01~14.63)→第4四分位群(同82.75以上)で1.25(95%CI 1.09~1.44)→2.54(95%CI 2.24~2.89)に上昇した。

 以上を踏まえ、Li氏らは「従来の過体重によるCRCリスクの疫学研究で検討されていたある一時期の過体重(BMI)と比べて、過体重の状態での累積的な生存年数(WYOs)はより重要なCRCの危険因子である可能性が示唆された」と結論している。

 さらに同氏らは「過体重によってCRCが誘発されるメカニズムはまだ完全には理解されていない」としながらも、「過体重は各種固形がんの重要な危険因子であり、CRCリスクを上昇させることが一貫して報告されている。システマチックレビューとメタ解析では、肥満者のCRCリスクは正常体重の者と比べて約7~60%高いことが示されている」と指摘。「過体重・肥満の増加傾向を抑制・改善する対策が、CRCや他の肥満関連がんの予防につながる可能性がある」と付言している。

(太田敦子)