新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大に伴い、患者の療養先の判断や症状のモニタリングなどが個人レベルで求められるケースも増えてきている。そこで、音声から脳神経状態や病態を分析する機器の開発に携わる企業のPSTと神奈川県立保健福祉大学は、音声病態分析技術を活用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度分類の「軽症」と「中等症Ⅰ」を判別する手法の開発研究に着手。技術開発の見通しが立ったとして、研究の中間結果を発表した。

全ての療養者に対する重症度分類を実現するために

 厚生労働省の「COVID-19診療の手引き」に示された重症度分類で、「軽症」に分類された場合は自宅療養の対象となる。しかし、重症度分類において重要な指標となる酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターは、在庫不足などの理由から全ての療養者に使用するのは難しい。

 こうした事態を打開するため、同大学ヘルスイノベーション研究科教授の徳野慎一氏とPST社は、ヒトの機能や病態の違いによる音声変化を解析・判定する音声病態分析技術を活用し、簡便かつ高精度な重症度分類手法の確立を目指して研究に着手した。

 研究に際し、同社はデータ収集システムを構築、神奈川県の協力を得て研究参加者の募集および参加者のデータ収集、分析を実施した。なお、研究参加者数は112人に上った(2021年6月14日~22年1月25日参加分)。

定型文の読み上げ、長母音の読み上げいずれでも高精度に判別可能

 研究の中間結果として、徳野氏らは音声によるCOVID-19患者の軽症および中等症Ⅰの判別が可能であることが分かったと発表した。

 音声の読み上げは、13種類の定型文を読み上げる方法と3種類の長母音を読み上げる方法の2パターンで行い、それぞれの判別精度は90.9%、74.2%と、いずれも十分な精度で判別可能であったという(図1、2)。

図1. 13種類の定型文読み上げ音声による判別制度

図2. 3種類の長母音読み上げ音声による判別制度

図2.jpg

(PST株式会社、神奈川県立保健福祉大学プレスリリース)

 同氏らは「今回の研究結果を活用した技術をスマートフォンのアプリケーションなどに実装した場合、特に13種類の定型文を読み上げる方法においては90%以上という高い精度でCOVID-19の重症度の判別が期待できる」と説明。「判別精度の向上などを図り、実装化および技術の確立を目指していく」と述べている。

(陶山慎晃)