米・Rush University Medical CenterのShahram Oveisgharan氏らは、スタチンを服用していない高齢者に比べ服用者ではパーキンソン病の運動症候の総称であるパーキンソニズムの発現リスクが有意に低かったとNeurology2022年3月23日オンライン版)に報告した。パーキンソニズムがない高齢者2,800例超を追跡した研究で、スタチンの用量によっても発症リスクの低減に差があることが分かった。

平均年齢76歳を約6年間追跡

 高齢者において脳血管障害はパーキンソニズムと関連するが、今回Oveisgharan氏らは「スタチンを服用中の高齢者では、パーキンソニズムの発現リスクが低い」との仮説を立て検証した。

 対象は、パーキンソニズムが認められない2,841例(平均年齢76歳、女性75%、スタチン服用33%)で、毎年スタチンの服用状況とともにパーキンソニズムの徴候を調べ、平均6年間追跡した。なお、パーキンソニズムは振戦、こわばり、パーキンソン歩行(全般的な動作の緩慢さ)、徐脈のうち2つ以上の症状の発現とした。

スタチン服用例は脳動脈硬化のオッズ比が0.63

 平均5.6年の追跡期間中に全体の約半数である1,432例にパーキンソニズムの徴候が見られた。スタチン服用の有無別に見ると、非服用例(1,905例)の約53%に対し、服用例(936例)では約45%と少なかった。

 年齢、性、パーキンソン病の寄与因子である喫煙、糖尿病などの血管リスクを調整しハザード比(aHR)を算出したところ、スタチン服用者ではパーキンソニズムのリスクが有意に低かった(aHR 0.84、95%CI 0.74~0.96、P=0.008)。スタチン服用例の約79%が中等量~高用量を服用しており、低用量のスタチン服用例に比べパーキンソニズムの発現リスクが有意に低いことも分かった。

 さらに死亡した1,044例(死亡時平均年齢89.2歳)において、スタチンの服用と病理所見の関連を検討。大脳動脈輪の大血管のアテローム動脈硬化を含む病理所見を評価した結果、スタチン服用例では脳動脈硬化のオッズ比(OR)が0.63と有意に低かった(95%CI 0.50~0.79、P<0.001)。アウトカムに影響を及ぼす要因を把握するため、媒介分析を行ったところ、軽度のアテローム動脈硬化を介した直接的な経路(OR 0.73、95%CI 0.54~0.93、P=0.008)および間接的な経路(同0.92、0.88~0.97、P=0.002)ともスタチンとパーキンソニズムに有意な関連が示され、アテローム硬化はスタチンとパーキンソニズム間の関連の17%を媒介することが示唆された。

 以上の結果から、Oveisgharan氏らは「スタチンを服用中の高齢者ではパーキンソニズムのリスクが低く、脳動脈硬化発症のリスク低減が部分的に介在している可能性がある」と結論。また「パーキンソニズムの治療は困難であり、今回われわれが示したスタチンの潜在的効果は興味深い知見である」と付言している。

 ただし、パーキンソニズムの評価は運動障害の専門家が行っていないため、適切な分類が不十分だった可能性があるという。

(田上玲子)