日本集中治療医学会は3月24日に、20年ぶりの見直しとなる『集中治療部設置のための指針 2022年改訂版』(以下、改訂版)を公式サイトに掲載した。この20年間で大きく変動した集中治療を取り巻く状況を反映させたもので、同学会の集中治療専門医研修施設の多くが改訂版の対象となる。

「であること」「推奨する」「望ましい」の表現を採用

 同学会によると、国内の重症患者治療用病床には設置基準において、患者対看護師比が常時2対1以上を要する①特定集中治療室管理料(以下、特定集中)1~4、②救命救急入院料(以下、救命救急)2 または 4、③小児特定集中治療室管理料を算定する病床、④患者対看護師比が4対1または5対1のハイケアユニット、⑤同3対1の脳卒中ケアユニット―などがあるという。

 これらを広く集中治療室 (ICU)と呼称する施設もあるが、改訂版では①および②に加えて、集中治療専門医が管理運営する患者対看護師比が常時 2 対 1 以上の中央診療部門である集中治療部を対象としている。いわゆるgeneral ICUの機能を備える同学会の集中治療専門医研修施設の多くが、これに該当する。

 2002年に『集中治療部設置のための指針』(初版)が公表されたが、この20年間に広い治療室面積を備え、充実した医療スタッフの配置を要する特定集中1または2が設置。さらに、新興感染症の流行に伴う重症感染症患者の増加に対応できる陰圧個室の必要性が認識されるなど、集中治療を取り巻く状況は激変した。

 今回、昨年(2021年)までに得られた新知見を加えて改訂作業を行った。改訂版では「であること」「推奨する」「望ましい」という3段階の表現が用いられている。また、集中治療部として最低限の必要条件には「であること」の断定的表現を、設備の項では日本規格協会のJapanese Industrial Standards(JIS)規格などで義務付けられているものには「でなければならない」などの表現を用いている。必須ではないが、患者の安全性や治療の確実性を確保するために強く望まれる条件は「推奨する」、施設の事情が許す限り備えるべき条件、業務の円滑化に重要と考えられる条件は「望ましい」とした。

集中治療専門医の配置:1ポッド当たり1人以上を推奨

 集中治療部における医療スタッフの配置は、厚生労働省の専従と専任の定義に基づき、専従では勤務時間の8割以上、専任では5割以上業務に従事することしている。

 集中治療部責任者は同学会が認定した集中治療専門医とし、集中治療部の診療のみを担当する医師が常時(午前0時~午後12時)部内に勤務していることが条件。病床数が多い場合は1 ポッド6~12病床とし、1ポッド当たりの集中治療専門医の配置は1人以上を推奨する。

 一方、看護師の配置は、1日平均で患者1.5人に対し1人以上の割合で勤務していることを推奨する。

 2020年時点で同学会集中治療専門医研修認定施設の95%以上が6床以上の病床を有する。今後、新設・改築する場合は8床以上であることが推奨された。より効率的な運用と患者転帰改善の観点から、ICU 病床数は病院全体の3%以上で、年間入室患者数が約700人以上であることが望ましい。複数の小さなユニットを持つ病院では、効率を上げるために1つの大きな部門に再編成することを推奨している。

医療機器の点検、交換、安全性のチェック:定期的に行わなければならない

 検査室として集中治療部内に緊急検査のための検査機器を設置するが、サービスと通信回線が迅速であることを条件に代替手段として病院の中央検査室を利用できる。

 集中治療部内に整備することとされた医療機器(器具)は、生体情報監視装置(心電図、観血式/非観血式血圧、パルスオキシメータ、カプノグラフィなど)、搬送用モニタ、救急蘇生器具、侵襲的/非侵襲的人工呼吸器など20種類。

 一方、集中治療部内に整備されていることが望ましいとされたのは、血液浄化装置、体温管理システム、体外式膜型人工肺(ECMO)など8種類。 これらは、集中治療部の種類や規模によって異なる。医療機器に精通した責任者の下で、医療機器の点検や交換、安全性のチェックを定期的に行わなければならないとした。また各医療機器の使用方法、トラブルシューティングについて、医師および看護師向けのハンズオントレーニングやマニュアル作成などがなされていることが望ましい。

空気清浄度:患者ごとに個室で調整されることが望ましい

 空調設備については、集中治療部の清浄度は準清潔区域(クラスⅢ)、最小換気回数は全風量で6回/時間以上、外気量で2回/時間以上、陽圧の室内圧、比色法80%以上のフィルタ効率が求められる。風量、換気回数は各室の冷暖房負荷を考慮したものでなければならない。ただし、high efficiency particulate air(HEPA)フィルタを用いてユニット全体の空気を清浄化することは必須とせず、感染伝播の観点から陽陰圧の切り替えや空気清浄度は患者ごとに個室で調整することが望ましい。

 また空気清浄度は、HEPAフィルタの設置により手術室と同等に保つ陽圧個室と、空気感染症にも対応可能な陰圧個室または、陽圧と陰圧を切り替えて使用できる個室を適正数配備することが望ましい。

 なお、特定集中治療室管理料の算定対象となる集中治療室の施設基準として、「バイオクリーンルームであること」が記載されているが、具体的な基準が示されていない。そのため初版では、国際標準化機構(ISO)の基準を設けていた。しかし、病棟内の空気清浄度を高めることで集中治療部内の感染症発生頻度が減少するというエビデンスはない。

 一方、集中治療部全体で空気清浄度を高めようとすると、HEPAフィルタを組み込んだ大規模空調施設が必要となり、多大な導入・維持費がかかる。その結果、集中治療部を新設、増設、感染症パンデミックによりハイケアユニットや一般病棟を集中治療病棟に転用する際の大きな障壁となっている。

 改訂版では、ISO基準などに準じた推奨は行わず、「HEPAフィルタ設置により手術室同等の空気清浄度を保つ個室と空気感染症にも対応可能な陰圧個室を集中治療部内に適正数配備することが望ましい」とした。

症例登録システム:学会のデータベースへの登録を推奨

 これら集中治療部設置への指針に加えて、症例登録システムや重症度スコアの使用に関する指針も記載された。

 集中治療室では日々の入退室記録に加えて,入室症例を電子的に登録するシステムを備えることが望ましい。施設内・施設間での比較、評価に向け、同学会が主導するJapanese Intensive care PAtient Database(JIPAD)への登録が推奨された。

 集中治療室では、重症度評価法であるAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)Ⅱスコアや、臓器不全評価法であるSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアを症例ごとに算出し、ICU 死亡などの転帰と合わせて評価・記録することを推奨する。

 なお、今後の改訂については、10年程度の間隔で見直すのが望ましいとしている。

(田上玲子)