岸田文雄首相が29日に策定を指示した緊急物価高対策は、財源として主に2022年度予算の新型コロナウイルス対策予備費(5兆円)を充てる。ウクライナ危機を背景にガソリンをはじめとする生活必需品の価格が幅広く上昇。緊急対策を求める声は野党にも広がっているとはいえ、コロナ予備費の流用は「目的外使用」と、財政規律の緩みを懸念する声が上がっている。
 緊急対策では、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除や年金生活者らへの支援策の扱いが焦点。中小企業の資金繰り支援のほか、自治体のコロナ対策の財源「地方創生臨時交付金」を拡充して原油高の影響を受けている個人や事業者を支援する案なども検討される見通し。
 政府は災害対応などを想定した22年度の一般予備費(5000億円)も緊急対策に活用する方針。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介上席主任エコノミストは「財源が限られているので、ガソリン高対策、低所得者の生活支援、中小企業支援が中心となる」との見方を示した。
 立憲民主党の勝部賢志氏は29日の参院財政金融委員会で、「コロナ予備費を物価高騰対策に使うのは目的外使用だ」と追及した。これに対し、鈴木俊一財務相は「コロナに関わるかどうか、各省庁の要求を個別に判断する」と精査する姿勢を強調した。財務省幹部は「コロナに無理やりこじつけた要求が相次ぐのは目に見えている」と警戒。その上で、「予備費(計5.5兆円)をすべて使えるわけではない」と予防線を張っている。
 コロナ対策では国民の負担増につながる財源確保の議論がないまま、巨額の財政出動が繰り返された。夏の参院選を控え、物価高が日本経済を直撃したことを「錦の御旗」として、与党内では補正予算案の編成による歳出拡大を求める声が一段と強まっている。 (C)時事通信社