心房細動(AF)患者に対する有効な脳卒中予防手段としては、ワルファリンを中心としたビタミンK拮抗薬(VKA)や直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)による抗凝固療法が挙げられるが、脳卒中の低リスク患者にも施行するかについては議論の余地がある。オランダ・Utrecht UniversityのJoris J. Komen氏らは、CHA2DS2-VAScスコアに基づく脳卒中低リスクAF患者を対象に抗凝固療法が脳卒中大出血イベントに及ぼす影響を検証した結果を、Eur Heart J2022年3月10日オンライン版)に発表した。

欧州4カ国のコホートから約6万例を解析

 今回の検討はスウェーデン(7,352例)、デンマーク(2万1,272例)、スコットランド(1万663例)、ノルウェー(1万9,789例)の各コホートを用いた多国籍コホート研究で、2011年1月~18年10月にAFと診断されたCHA2DS2-VAScスコアの低リスク(男性1点、女性2点)患者5万9,076例を対象とした。組み入れ前6カ月間に大出血を来した例や90日以内に抗血栓薬が処方された例などは除外した。

 対象の内訳は、登録後にDOACを処方されたDOAC群が37%(2万1,926例、平均年齢65.3歳、平均HAS-BLEDスコア1.23)、VKAを処方されたVKA群が19%(1万1,201例、同64.2歳、1.25)、抗凝固薬を処方されなかった非投与群が53%(3万1,385例、同63.5歳、1.38)だった。DOAC群の内訳は、アピキサバンが47%、リバーロキサバンが29%、ダビガトランが23%、エドキサバンが1%だった。

 最初のイベント、移住、死亡、抗凝固療法の中止、CHA2DS2-VAScスコアの上昇のいずれかが発生するまで、または2.5年間追跡した。有効性の主要評価項目は、虚血性脳卒中または分類不能の脳卒中の複合、安全性の主要評価項目はなんらかの大出血とし、副次評価項目は消化管出血頭蓋内出血に加え、脳卒中大出血、全死亡の複合とした。 3群のその他既往歴は、血管疾患が非投与群で、心不全がVKA群でやや多く、VKA群ではベースライン時にβ遮断薬の服用者が少なかったが、おおむね3群に大きな差はなかった。

DOAC群では非投与群と比べ脳卒中リスクを、VKA投与群と比べ頭蓋内出血リスクを抑制

 追跡期間中に脳卒中が432例、大出血が566例(うち、頭蓋内出血146例、消化管出血250例)に認められ、100人・年当たりのイベント発生率は脳卒中が0.58、大出血が0.76、頭蓋内出血が0.20、消化管出血が0.34だった。

 続いて、4つのコホートによるメタ解析を行い、3群におけるハザード比(HR)を算出してリスクを比較した。DOAC群と非投与群の比較では、DOAC群で脳卒中リスク(HR 0.72、95%CI 0.56~0.94)が低下したものの、大出血リスク(同1.26、1.00~1.58)は増加し、出血リスクの増加は頭蓋内出血リスク(同0.84、 0.54~1.30)ではなく、消化管出血リスク(同1.48、1.05~2.08)が寄与しているものと考えられた。脳卒中大出血/死亡の複合リスク(同0.45、0.41~0.50)はNOAC群で低下した。

 DOAC群とVKA群の比較では、脳卒中リスク(HR 0.92、95%CI 0.70~1.22)、大出血リスク(同0.85、0.69~1.06)、消化管出血リスク(同1.00、0.72~1.39)とも有意差はなかったが、頭蓋内出血リスクについてはDOAC群で有意に低下し(同0.63、0.42~0.94)、脳卒中大出血/死亡の複合リスク(同0.87、0.68~1.11)に差はなかった。

 さらに、VKA群と非投与群の比較では、脳卒中リスク(HR 0.81、95%CI 0.59~1.09)、大出血リスク(同1.44、0.83~2.50)、消化管出血リスク(同1.20、0.62~2.32)、頭蓋内出血(同1.37、0.88~2.14)に有意差はなかったものの、脳卒中大出血/死亡の複合リスク(同0.50、0.41~0.62)は低下した。

 Komen氏は「今回の結果から、脳卒中のリスクが低いAF患者において、DOAC投与により非投与と比べて頭蓋内出血リスクを増加させることなく、脳卒中リスクを抑制し、VKA投与と比べて脳卒中リスクに差はなく、頭蓋内出血リスクが低下した」とまとめた。    

(編集部)