岸田文雄首相が就任して4日で半年を迎える。世論に素早く反応することでピンチを乗り越えてきたが、ここにきて新型コロナウイルスの感染再拡大と、ウクライナ危機を受けた物価高騰という二正面の対応を迫られる。夏の参院選前に経済再生に道筋を付ける首相の戦略は狂いも生じている。
 「一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、国際社会が連携して強い措置を取っていくことが必要だ」。首相は1日の参院本会議で、ロシアのウクライナ侵攻を改めて非難した。
 首相は侵攻から5日後に、バイデン米大統領らとの電話会議で「力による現状変更には明確なコストを示す」と明言。併せて発表したロシアへの追加経済制裁は、プーチン大統領個人も対象とした。政府関係者は「プーチン氏への制裁に踏み切ったことで、政府全体に『できることは何でもやろう』という認識が広がった」と振り返る。
 世界的な「危機」への対応が追い風となり、2月は下降局面にあった内閣支持率が、3月になると再び盛り返す。世論調査の数字を見た首相も「ほっとした様子だった」(関係者)という。
 この間、首相が「反面教師」にしてきたのが、新型コロナ対応で「後手」批判を浴び、支持率低迷に苦しんだ菅前政権の例だ。周辺は「判断の早さが高支持率につながっている」との見方を示す。
 だが、参院選に勝利して長期政権の足掛かりとしたい首相には難局が待ち受ける。
 新型コロナの感染者数は再び増加し始め、東京都で変異株「オミクロン株」の別系統「BA.2」の疑い例が全体の5割を突破。若者に対するワクチンの3回目接種も遅れ気味で、「第7波」の懸念が現実味を帯びる。
 さらに、ウクライナ危機で拍車が掛かった原油価格の高騰は出口が見えない。食料品を含む幅広い物価高につながり、国民生活を圧迫しつつある。
 首相は就任当初、早期にコロナ禍を克服した上で、観光支援事業「Go To トラベル」などを通じて経済を立て直し、参院選に臨む戦略を描いていた。しかし、7月10日に想定される政治決戦を3カ月後に控え、政権は足元の対応に追われている。
 首相が先月末に取りまとめを指示した緊急経済対策は、原油を含む物価高への応急処置が目的で、周辺も「国内総生産(GDP)を押し上げるためのものではない」と認める。加えて、与党が提案した年金生活者への5000円支給案が批判を浴びたように、世論を読み誤れば不満の矛先が政権に向きかねない。
 「(物価高のまま)夏になると、クーラー代が跳ね上がり、政権批判につながる」。自民党関係者からは早くも参院選の逆風を懸念する声が聞こえ始めた。 (C)時事通信社