国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクトの研究グループは、大規模な人口ベースの多目的コホート研究JPHC Studyにおける2回の食物摂取頻度調査のデータから、イソフラボンや大豆製品の摂取量と認知機能障害〔軽度認知障害(MCI)および認知症〕リスクとの関連について調べた結果をJ Epidemiol2021年12月18日オンライン版)に発表。イソフラボンの摂取が多い者では認知機能障害リスクが高かったと報告した(関連記事「大豆食品摂取量と乳がんリスクは関連せず」「発酵性大豆食品で全死亡リスクが低下」「肉の摂取で男性の死亡リスクが上昇」)。

摂取量で四分位に分類し認知機能障害リスクを解析

 近年、イソフラボンや大豆製品の摂取は、循環器疾患のリスク低下との関連が報告されるなど健康への影響が注目されている。しかし、認知機能リスクとの関連についてはエビデンスに乏しく、明らかでない。そこで研究グループは、イソフラボンや大豆製品の摂取量と認知機能障害リスクとの関連性を調査した。

 調査の対象は、1990年に長野県佐久保健所管内に在住していた男女のうち1995年と2000年に実施した食物摂取頻度調査票(FFQ)に回答し、うつの既往がなく2014~15年に行った「こころの検診」にも参加した1,036人である。

 2回のFFQの回答結果から、イソフラボン、大豆製品全体、豆腐、味噌、納豆、発酵性大豆食品(味噌と納豆の合計)の摂取量の平均値を算出し、四分位に分類した。摂取量が最も少ないグループを第1四分位群(基準)として、その他の群のオッズ比(OR)を算出した。今回の研究では、イソフラボンの主な種類であるゲニステインとダイゼンの間で高い相関が認められたことから、ゲニステイン摂取量をイソフラボン摂取量の代替として用いた。

 解析に当たり、年齢、性、教育歴、葉酸摂取量、飲酒習慣、喫煙習慣、BMI、身体活動量、向精神薬服用、糖尿病の既往歴、脳卒中の既往歴、魚類・肉類・野菜・果物・ナトリウムの摂取量を調整した。

大豆食品の摂取量で見るとリスクの変動は認めず

 研究では、記憶やその他の認知機能に関する4つの検査と医師の判定により、392例(MCI346例、認知症46例)が認知機能障害と診断された。

 解析の結果、イソフラボンの摂取量が多い群ほど認知機能障害のリスクは上昇した(傾向性のP=0.03)。摂取量が最も多い第4四分位群ではOR 1.51と有意に高かった()。一方、大豆製品の摂取量、豆腐、味噌、納豆、発酵性大豆食品の摂取量については、認知機能障害との関連は認められなかった。

図.イソフラボン、大豆食品摂取量と認知機能障害リスク

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(国立がん研究センタープレスリリースより引用)

加齢による影響を除外できていない可能性も

 イソフラボンと認知機能障害の関連を検討した先行研究では、両者に関連は認められず、イソフラボンの摂取量が多い者では女性のみ認知機能障害リスクの低下が示されていた。今回の結果が先行研究とは異なった点について、研究グループは「そもそも日本人は大豆製品の摂取量が多く、今回の研究でリスクが高かった群の摂取量は、先行研究と比較しても極めて多かった」ことを挙げている。さらに今回の解析では年齢を調整したが、イソフラボンの多量摂取例は高齢者に多く、加齢による認知機能低下の影響を除外し切れていない可能性も考えられるという。

認知機能障害例が少数だったなどの研究の限界も

 なおイソフラボンは腸内細菌により、エストロゲン様作用の強いエクオールに代謝されるが、中には代謝されない者もいるため、イソフラボン摂取量が体内での作用量を必ずしも反映していない可能性がある。このことは、今回の結果に影響を与えた可能性があるが、同研究ではエクオール代謝能の有無は調べていない。

 また、認知機能障害と診断された症例が少なくなかったため、男女別の解析もなされていないなどの限界点もあり、さらなる研究が期待される。

(小野寺尊允)