米・National Institute on Aging, BaltimoreのYi-Han Hu氏らは、若年〜中年期にかけての血圧と中年期の脳の構造との関連を検討するため、18〜30歳の成人853例を30年間追跡調査したコホート研究を実施した。その結果、中年期までの血圧の上昇は、びまん性小血管疾患および脳血流低下など脳の健康不良を示す傾向があるとJAMA Netw Open2022; 5: e221175)で発表した。

平均動脈圧の変化で5群に分類

 血圧と脳に関する先行研究では、中年〜晩年期の血圧パターンとその後の転帰に焦点を当てたものが多い。しかし、晩年期の認知障害は中年期以前に始まり、若年〜中年期の血圧が心疾患リスクに影響するというエビデンスがある。

 そこでHu氏らは、若年〜中年期にかけての血圧と中年期の脳の構造との関連を調査。米国の4都市で30年間(1985、86年~2015、16年)に最大8回のフォローアップ検査を実施した成人(基準年齢18~30歳)を対象とした前向き縦断研究Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)のデータを用いて、コホート研究を行った。

 研究では、25年目までに少なくとも3回の血圧測定を行った4,677例の血圧測定値の軌道(BP軌道)をモデル化。25年または30年目の検査で脳MRIを受けた885例のうち、MRIと血圧測定が完全に実施された853例〔平均年齢50.3±標準偏差(SD)3.6歳、男性399例(46.8%)、黒人354例(41.5%)、白人499例(58.5%)〕のサブセット解析に適用した。収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)を統合した指標として平均動脈圧(MAP)を検討し、線形回帰により、人口動態変数、心血管危険因子、降圧薬の使用を調整し、BP軌道と脳構造との関連を検討した。解析は2019年11月~20年12月に実施した。

 主要評価項目は、脳全体、灰白質全体、正常および異常白質の体積、灰白質脳血流、白質異方性比率(Fractional anisotropy;FA)を含むMRIの転帰とした。

 MAPについて5つの軌道群を推定し、①低・安定群:追跡期間中、低血圧値を維持した者、②中・漸増群:中等度の血圧値から漸増した者、③中・増加群:中等度の血圧値から急速に増加した者、④高・安定群:比較的高い血圧値のまま追跡期間を通じて安定していた者、⑤高・増加群:最初から高血圧値で40歳まで徐々に上昇し、その後緩やかに下降した者-に分類した。

MAP増加群で総灰白質体積の低下、異常白質体積の上昇、灰白質脳血流の低下を確認

 解析の結果、885例のMAPの軌道分布は、低・安定群187例(21.1%)、中・漸増群385例(43.5%)、中・増加群71例(8.0%)、高・安定群204例(23.1%)、高・増加群38例(4.3%)であった。

 853例を対象としたサブセット解析について、脳の転帰の記述統計では、高・増加群(34例)は5群の中で頭蓋内容積に対する総灰白質容積比が最も小さく〔平均(SD)比: 0.46(0.03)vs. 低・安定群:0.47(0.02)、P=0.06〕、異常白質体積は最も大きかった〔同0.25(0.20)vs. 0.18(0.11)、P<0.001〕。また、灰白質脳血流量は最も低かった〔同26.9(5.4)mL/100g/分 vs. 30.7(7.6)mL/100g/分〕。

 人口動態変数と心血管危険因子を調整した線形回帰モデルでは、低・安定群(183例)に比べて、中・増加群(67例)および高・増加群(34例)では、異常白質体積が大きい傾向が見られた(中・増加群:β=0.52、95%CI 0.23〜0.82、高・増加群:β=0.57、95%CI 0.19〜0.95)。

 高・増加群では灰白質脳血流も低下していた(β=-0.42、95%CI-0.79〜-0.05)。

 降圧薬使用の有無を調整すると、異常白質体積ではその差は一定であったが、灰白質脳血流では有意差はなくなった。

 以上から、若年期から中年期にかけて安定しているMAP軌道と比較して、MAPが徐々に上昇する軌道(中・増加群および高・増加群)では、総灰白質体積の低下、異常白質体積の上昇、灰白質脳血流の低下など脳の健康不良を示す傾向があった。

 今回の研究について、Hu氏らは「後期高齢者研究からのエビデンスと合わせて考えると、若年〜中年期の血圧上昇を防ぐことは、認知症予防の有望な戦略となる可能性がある」と結論している。

(今手麻衣)