米・University of MinnesotaのWendy Wang氏らは、同国の大規模地域コホート研究Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)Studyに参加した約4,000例のデータを解析した結果、二次元心エコー検査(2DE)で評価した左房機能の低下がその後の認知症の発症リスク上昇に関連することが示されたとJAMA2022; 327: 1138-1148)に発表した。2DEによる左房容積と認知症リスクとの関連は認められなかった。

各strain値とactive emptying fractionがリスク上昇に関連

 左房の機能と容積の変化を特徴とする心房心筋症は、心房細動(AF)とは独立して虚血性脳血管障害に関連することが示されている。これまでの研究で、心房心筋症の心電図上のマーカーが認知症に関連することが示されているが、2DEによる左房機能および容積の指標が認知症に関連するかどうかはよく分かっていなかった。

 そこで、Wang氏らはARIC Studyのデータを用い、2DEによる左房機能指標〔貯留(リザーバ)機能(reservoir strain)、導管機能(conduit strain)、収縮機能(contractile strain)、リザーバ機能指標(emptying fraction、passive emptying fraction、active emptying fraction)〕、最大および最小左房容積係数(LAVI)と認知症の新規発症リスクとの関連を検討した。Visit5(2011~13年)で経胸壁2DEを受け、同時点またはそれ以前にAFまたは脳卒中と診断されていない参加者4,096例(平均年齢75歳、女性60%、黒人22%)を抽出し、2019年12月31日まで追跡した。

 中央値6年の追跡期間における認知症の新規発症は531例だった。認知症の新規発症率(100人・年)は、全ての左房機能指標において最低五分位群で最も高かった(reservoir strainで4.80、conduit strainで3.94、contractile strainで3.29、emptying fractionで4.20、passive emptying fractionで3.67、active emptying fractionで3.27)。

 年齢、性などを調整後の解析で、左房機能指標と認知症との間に有意な関連が認められた。最高五分位群に対する最低五分位群における認知症の調整後ハザード比(HR)は、reservoir strainで1.98(95%CI 1.42~2.75)、conduit strainで1.50(同1.09~2.06)、contractile strainで1.57(同1.16~2.14)、emptying fractionで1.87(同1.31~2.65)、active emptying fractionで1.43(同1.04~1.96)だった。ただし、passive emptying fractionと認知症との有意な関連は認められなかった(HR 1.26、95%CI 0.93~1.71)。

左房容積との関連、AFの媒介は認めず

 また、認知症の新規発症率(100人・年)は最大LAVIおよび最小LAVIともに最高五分位群で最も高かった(最大LAVIで3.18、最小LAVIで3.50)。

 ただし、最低五分位群に対する最高五分位群における認知症の調整後HRは、最大LAVIで0.77(95%CI 0.58~1.02)、最小LAVIで0.95(同0.71~1.28)と算出され、いずれも認知症との有意な関連は認められなかった。

 左房機能指標と認知症との関連は、AFまたは脳卒中を新規発症した患者を除外した感度解析でも維持されていた。また、媒介分析においてAFが左房機能指標と認知症との関連を媒介する割合は2%未満だった。

 以上を踏まえ、Wang氏らは「左房機能低下を示す複数の2DE指標が、その後の認知症の発症リスク上昇と有意に関連していた。一方、左房容積と認知症リスクとの有意な関連は認められなかった。左房機能低下がAFとは独立した認知症の危険因子である可能性が示唆された」と結論している。

(太田敦子)