小児のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病に対して第3世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブは、安全かつ有効である可能性が示された。鹿児島大学大学院小児科学講師の児玉祐一氏らが、わが国の小児Ph+白血病患者に対するポナチニブの使用実態を明らかにするため実施した後ろ向き調査の結果を、Int J Hematol2022年3月29日オンライン版)で報告した。

第2世代TKIに抵抗性示す患者の治療が課題

 フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)や慢性骨髄性白血病(CML)を含むPh+白血病は、9番染色体と22番染色体の相互転座によりBCR-ABLキメラ遺伝子が形成され、BCR-ABLチロシンキナーゼが活性化することで発症すると考えられている。これらの白血病は極めて予後不良の病型として知られていたが、TKIの導入によって予後が劇的に改善した。

 小児のPh+ ALLの治療においてもTKIと化学療法の併用療法が標準治療として位置付けられ、造血細胞移植(HCT)を必要とする患者の減少に寄与した。小児CMLではHCTを要する患児は少なく、予後も良好であるものの、T315I変異を有する例や第2世代TKIに抵抗性または不耐容などの難治例も見られ、こうした患児に対する治療が大きな課題となっていた。

 そうした中、わが国では2016年に再発および難治性のPh+ ALLおよびCMLに対する治療薬として第3世代のTKIであるポナチニブが承認された。しかし、小児患者における同薬の使用に関するデータが少なかったことから、児玉氏らはPh+白血病の小児患者に対する同薬使用の実態調査を行った。

小児患者13例について検討

 調査は日本小児がん研究グループ(JCCG)参加施設を対象に実施。回答のあった95施設中12施設で2016年11月~19年9月に小児Ph+白血病患者13例(Ph+ ALL 9例、CML 4例)に対してポナチニブが使用されていた。治療開始時点の年齢中央値は12歳(範囲8~16歳)、男児9例、女児4例。ポナチニブ単剤投与例は6例、ポナチニブとプレドニゾロンの併用例は3例、ポナチニブとリツキシマブ髄腔内投与併用例は1例、ポナチニブと従来の化学療法の併用例は1例。ポナチニブ単剤投与とポナチニブ+化学療法併用投与の両方が行われた患児は2例。ポナチニブの使用量(中央値)は16.9mg/m2(範囲7~34.3mg/m2)、治療期間(同)は1.1カ月(範囲0.2~22.7カ月)であった。

 奏効は、Ph+ ALLでは寛解達成または寛解した患児でBCR-ABL1 mRNA発現量が2 log減少した場合と定義し、CMLではEuropean LeukemiaNet(ELN)2013年版で示されたイマチニブ治療失敗例に対するセカンドラインのTKI治療における至適奏効の評価基準(Blood 2013; 122: 872-884を満たした場合と定義した。

Ph+ ALL 9例中6例、CML 4例中2例で奏効

 検討の結果、Ph+ ALL患児9例中6例でポナチニブが奏効した。うちポナチニブ(15~25mg/m2)単剤投与例では3例中2例で奏効が得られ、残る1例は寛解達成には至らなかったが同薬投与によりBCR-ABL1 mRNA発現量の2 log減少を達成していた。一方、CML患児では、ポナチニブ(15~25mg/m2)が投与された4例中2例で奏効が得られた。

 また、T315I変異を有する4例(Ph+ ALL 3例、CML 1例)全例でポナチニブ(15~25mg/m2)単剤投与またはポナチニブ+プレドニゾロン併用療法後に奏効が得られた。ただし、そのうち1例は約10カ月間の寛解後に再発し、造血幹細胞移植(HSCT)を受けずに死亡した。

 この他、13例中9例(Ph+ ALL 7例、CML 2例)にHCTまでのブリッジング治療としてポナチニブが投与された。9例中7例でHCTが施行され、残る2例は毒性と病勢進行を理由に1カ月以内にポナチニブ投与が中止されHCTを受けられなかった。

 毒性に関しては、ポナチニブ単剤投与を受けた8例中1例でGrade 4のリパーゼ値の上昇が認められた。主なGrade 3の非血液学的毒性は、ALT値上昇(25%)、AST値上昇(25%)、γ-GT値上昇(12.5%)、高血圧(12.5%)、多形紅斑(12.5%)などであった。

 以上を踏まえ、児玉氏らは「ポナチニブは小児患者に対しては多くが錠剤として投与されており、安全と考えられた。また、同薬は第2世代TKIが奏効しない難治性のPh+白血病、特にT315I変異保有例やHCTまでのブリッジング治療において有効である可能性がある」と述べている。

※3カ月でBCR-ABL1IS≦10%かつ/またはPh+細胞<65%、6カ月でBCR-ABL1IS≦10%かつ/またはPh+細胞<35%、12カ月でBCR-ABL1IS<1%かつ/またはPh+細胞0、それ以降はBCR-ABL1IS≦0.1%を至適奏効と定義

(岬りり子)