心房細動(AF)は心血管疾患(CVD)の危険因子であることが知られているが、これまで高齢2型糖尿病患者におけるAF発症率の正確な推計はなかった。東京医科大学病院循環器内科講師の松本知沙氏らは、日本の2型糖尿病患者におけるアスピリンの有用性を検討したJPAD2試験の参加者を対象に、高齢2型糖尿病患者のAF発症率と予後を検討。その結果、年間約200人に1人がAFを発症しており、AF発症群では年間約20人に1人が死亡、約30人に1人に脳心血管イベントが発生し、CVDリスクがAF非発症群の2~5倍に上ったとBMJ Open Diab Res Care2022;10:e002745)に発表した。

平均年齢65歳を中央値10.9年追跡

 JPAD2試験は、2002年12月~05年5月に日本全国の163施設から30~85歳の2型糖尿病患者2,535例を登録し、低用量アスピリンによる心血管イベントの初発予防効果を検討したランダム化比較試験JPADの延長試験。2008年4月のJPAD試験終了後から全例を2019年まで追跡した。

 今回の解析では、JPAD2試験の参加者2,535例(ベースラインの平均年齢65歳、糖尿病罹病期間の中央値7.0年)におけるAF発症率を算出し、AFの発症群と非発症群における脳心血管イベントの発生率を比較した。

 その結果、追跡期間中央値10.9年におけるAF発症は132例で、AF発症率は1,000人・年当たり5.14と算出され、年間約200人に1人がAFを発症していることが示された。

AF発症群で冠動脈疾患リスク2倍、心不全リスク5倍

 各イベントの発生率(1,000人・年当たり)の比較では、AF発症群はAF非発症群に比べて脳心血管イベント(35.08 vs. 12.93、P<0.0001)、脳卒中(17.93 vs. 6.67、P=0.003)、冠動脈疾患(19.2 vs. 6.52、P=0.0003)、心不全(20.03 vs. 2.09、P<0.0001)の発生率が有意に高かった(全てlog-rank test)。AF発症群では年間約30人に1人に脳心血管イベントが発生していることが示された。

 脳心血管イベントの危険因子を調整後のCox比例ハザードモデルによる解析でも、AF発症群はAF非発症群に比べて脳心血管イベント〔調整後ハザード比(aHR)1.65、95%CI 1.03~2.66〕、冠動脈疾患(同1.96、1.03~3.73)、心不全(同5.17、2.46~10.89)のリスクが有意に高かった。一方、脳卒中リスクの有意な上昇は認められなかった(aHR1.54、95%CI 0.81~2.93)。

AF発症で全死亡率も上昇

 また、AF発症群ではAF非発症群に比べて全死亡率(1,000人・年当たり)が有意に高く(49.34 vs. 17.80、HR 1.82、95%CI 1.24~2.67)、年間約20人に1人が死亡していることが示された。

 以上を踏まえ、松本氏らは「AFを発症した高齢2型糖尿病患者は、AF非発症例と比べてCVD発症リスクが有意に高かった。高齢2型糖尿病患者に対しては、AFの新規発症を適時検出するために慎重なフォローアップが必要である」と結論している。

 また、危険因子を調整後に有意な脳卒中のリスク上昇が認められなかった点について、同氏らは「この理由は説明できないが、脳卒中イベント数が少なかったために有意なリスク上昇がマスクされた可能性がある」と考察。その上で、「AF発症群における脳卒中の発生率自体は1,000人・年当たり17.93と高いことから、高齢2型糖尿病患者には慎重なフォローアップが必要であることは間違いない」と付言している。

(太田敦子)