若年発症成人型糖尿病(MODY)は糖代謝に関わる単一遺伝子の機能障害が原因となる疾患である。日本糖尿病学会の「単一遺伝子異常による糖尿病の成因、診断、治療に関する調査研究委員会」は、MODYのサブタイプの1つであるMODY3に関し、原因遺伝子である肝細胞核因子1α(HNF1A)ががん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイル検査:CGP検査)の二次的所見として検出される懸念があると公式サイトで指摘。しかし糖尿病診療が専門ではないため、糖尿病専門医が関与するよう求めている。

二次的所見の指針にHNF1Aが収載

 CGP検査の目的は腫瘍の特徴や性質を知ることで個別化医療につなげることだが、二次的所見として被験者および血縁者が有する生殖細胞系列の遺伝子変異が偶発的に検出される可能性がある。

 この二次的所見を適切に取り扱うための指針が米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)により作成され、最新版では二次的所見に関する報告を推奨する生殖細胞系列の遺伝子変異(病的バリアント)のリストに、HNF1Aが収載された。

 報告を推奨する根拠としては、①MODYは正しく診断することが難しく、未診断例が多い、②正しい診断に基づいた適切な治療が実施されない場合は合併症のリスクがある、③HNF1A異常によるMODY3はMODY全体の30〜65%程度を占めており、少量のスルホニル尿素(SU)薬で治療できる可能性がある、④HNF1A異常を有する新生児が重篤な一過性高インスリン性低血糖症を呈しうる可能性をあらかじめ認識し、対処できる可能性がある、⑤HNF1A異常によるMODY3の95%以上がエクソームシークエンスで検出可能―が挙げられている。

糖尿病専門医の関与を推奨

 糖尿病診療を専門としない科においてHNF1A異常が検出されても適切な対応が取られないことが危惧されるため、同委員会では臨床遺伝専門医や遺伝診療部門と連携して糖尿病専門医が関与することを推奨しているが、「糖尿病と診断されMODYを疑い、MODYについて十分説明した上で遺伝子診断を行う患者とは状況が異なることに留意が必要」と解説。特に「これまで1型糖尿病と診断されて治療を継続していた場合、診断名の変更に伴うアイデンティティの揺らぎ、従来の治療に対する疑念や後悔などが湧いてくる可能性がある」「50%の確率で次世代へ疾患が継承される」という2点に対し、心理的サポートが求められるという。

 その上で、ACMGの指針に沿った遺伝情報の開示を患者の利益につなげるため、MODYおよびMODY3について以下のように解説している。

①MODYは常染色体顕性遺伝形式をとり、糖代謝に関わる単一遺伝子の機能障害が原因となる。おおむね35歳までに糖尿病を発症し、著明な肥満歴がなく、膵島関連自己抗体陰性の症例でMODYを疑う必要がある

②薬物療法を要するMODYのうち、最も高頻度なものがHNF1A異常を要因とするMODY3。HNF1A異常では進行性のインスリン分泌低下を来し、経時的に血糖が上昇し治療を必要とする。HNF1A異常では尿糖排泄閾値が低下しており、糖尿病発症前からしばしば尿糖を呈する

HNF1A異常ではSU薬に対して有効性が示唆されており、インスリン治療中の患者の多くでSU薬への変更によりインスリンを離脱できたとの報告が存在する。一方、SU薬による治療効果は経時的に減弱し、しばしば追加治療を要するとも報告されている。DPP-4阻害薬や、GLP-1受容体作動薬が有効とする報告もある

HNF1A異常の浸透率は95%に達するとの報告があるが、遺伝子異常の部位により浸透率が変化する可能性や、症例の集積、とりわけ二次的所見として見いだされた事例の集積により、今後浸透率に関する新たな知見が得られる可能性がある

(安部重範)